いよいよ新学期
4月12日(月)
いよいよ今日から、新学期の授業がはじまる。
先週1週間は、オリエンテーションで、なんとなく落ち着かない日々が続いた。しかもそれらにかなり主体的にかかわらなければならない立場だったから、それなりに神経を使い、週末は、抜け殻のようになってしまった。
「先週の木曜日(8日)、1年生のオリエンテーションで司会をしながら会場を見渡していたら、知っている4年生に激似の新入生がいたので、終了後、『ひょっとして、○○さんの妹ですか』とたずねたら、『そうです。ひょっとして先生は、サンカクブチシンジュウキョウの先生ですよね』と聞き返された話」
とか、
「先週の金曜日(9日)、同僚Sさんの昇進祝いで、べろんべろんになるまで酔っぱらったSさんが、3次会の帰りがけに、店のレジの前で大の字になって寝てしまった、ということを、今日(12日)、本人に言ったら、『まったく覚えていないんです』と言われた話」
などは、面白いのだが、書くのが面倒なので、詳しくは書かない。
さて、今日の夕方、短期留学生のオリエンテーションがあった。
私も、韓国から来た留学生1人の指導教員になっていたので、参加する。そこではじめて、私が指導教員となる留学生、M君と会う。
日本語はほぼ完璧である。
ちょっと韓国語で会話してみたいな、という欲求はあるのだが、それは、留学生にとっては、迷惑この上ないことなので、ぐっとこらえる。
なぜなら、彼は日本語を勉強しにやってきたのだから。日本語で会話をすることが、彼らにとっては何よりの勉強なのだ。
私が通っていた語学院の先生もそうだった。たとえ、先生が日本語や中国語を知っていたとしても、そんなことはおくびにも出さずに、すべて韓国語で指導されていた。これはたぶん、語学の先生の鉄則であろう。
妻がソウルにいたとき、日本語を学んだ韓国人の知り合いが、やたら日本語で話しかけてきたのには閉口した、と言っていた。日本語を学んだ彼らからすれば、学んだ日本語をネイティブの人を相手に試してみたい、というのは、よくわかる。だが、外国語を学ぼうとしている人からすれば、迷惑この上ないことなのである。
だから、韓国語を封印して、会話をすすめる。
「日本のドラマを見て韓国語を勉強したんです」と、M君。
「どんなドラマを見たの?」
「『コード・ブルー』です」
こおど・ぶるぅ?
どんなドラマなのか、私は全く知らないので、話がそれ以上ふくらまない。
「韓国で『コンブエ シン(勉強の神)』は見たんだけどね」
「ああ、日本の『ドラゴン桜』が原作のやつですね」
「見た?」
「『コンブエ シン』は見てないんですけど、『ドラゴン桜』は見ました」
私は、「ドラゴン桜」の方を見ていないんだけどな。
なんとなく、会話が平行線のまま、オリエンテーションがはじまった。
途中、司会の先生が、
「日本に滞在中は、危険な行為をしてはいけません。『バンジージャンプ』とか、『カヌーで川下り』とか」
とおっしゃったことに、みんなが爆笑する。
まさか、バンジージャンプなんかしないだろう、ということなのだろう。
しかし私は、韓国の語学院で経験している。
いや、正確には私が、ではない。私のチングの、中国人留学生が、である。
あれは1級の時の野外授業。ウバンランド、という遊園地に行ったとき、大邱タワーにのぼった。
「大邱タワーで、バンジージャンプが体験できます」と書いてある。
(まさか、挑戦するやつなんかいないだろう)
と思いつつ、大邱タワーを降りて、外を歩いていると、「ギャー」という悲鳴が。
見上げると、語学院の中国人留学生が、バンジージャンプをやっているではないか!
おいおい、大丈夫か?異国の地で、バンジージャンプに挑戦するなんて、たいした度胸だ、と呆れつつも、感心した。
だから、司会の先生が例に出した「バンジージャンプ」は、決して極端な例ではない、と、私には思えたのである。
「何か、質問ありますか?」と司会の先生。
M君がすかさず手をあげる。
「あの…スキーもダメでしょうか」
これにも一同が爆笑。そりゃそうだ。世界的にも有名なスキー場を抱えているこの地で、スキーを封じられてしまっては、何のためにここに来たのか、わからない。
「スキーは、大丈夫でしょう」と先生。
オリエンテーション終了後、M君に研究室に来てもらって、今後のことなどについてお話をする。
携帯電話の番号など、連絡先を教えあうことになった。
「あの…、赤外線通信は可能でしょうか?」とM君。
赤外線?たしか、携帯電話にそんな機能があったような…。
やってみるが、どうもよくわからない。
「ちょっと貸していただけますか?」とM君が言うと、私の携帯電話をササっといじって、赤外線通信をあっという間に終えてしまった。
私も、韓国の携帯電話を使ったことがあるが、異国の携帯電話を使いこなすのは、なかなか大変である。しかも彼は、まだ日本に来たばかりである。
「よく、そんな機能まで知っているね」と私。
「こういうこと、けっこう好きなんです」とM君は答えた。
もう、教えることなんて、何もないな。というより、日本で取り残されているのは、この私の方なんだな。
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