講演会リハビリ
4月29日(木)
数日前、同僚のAさんが研究室にいらした。
「29日、空いてる?」
「ええ、空いてますよ」
「29日に、Nさんが美術館で講演をするそうなんだよ」
Nさんというのは、職場の同僚である。美術館の特別展にあわせた講演会が開かれるという。
「で、Nさんに内緒で、講演会を聞きに行こうと思うんだけど、どう?」
「いいですね」
私も少し経験があるが、一般向けの講演会で、職場の同僚が聞きにくる、というのは、意外と恥ずかしいものである。前もって知っていれば、あるていど覚悟はするのだが、いきなり同僚がいたりすると、少しやりにくかったりするのだ。Aさんは、そのことをねらい、仲のよいNさんに「軽いドッキリ」を仕掛けるつもりなのだろう。もちろん、講演の内容が興味深いから、というのが、大前提にあるのだが。
でも、門外漢の私をなぜさそってくれたのだろう。
ひょっとして、休日になると引きこもる、という最近の私の状況を見かねて、外に出るためのきっかけをあたえてくれたのではないか。つまりは、リハビリである。
私は、Aさんの心づかいに感謝した。
「あくまでも、Nさんに内緒だよ」と、Aさんが念を押す。
「わかりました。ちょいとしたドッキリですね」と私。ドッキリといっても、ダマされる方もその自覚がないくらいの、ユルいドッキリなのだが。
さて当日。
少し早めに会場について、特別展の展示を見ていると、同僚のSさんがいた。たぶん私と同様に、Aさんの「ユルいドッキリ計画」に誘われたのだろう。
少し遅れて、Aさんがいらした。
「いやあ、受付でNさんに見つかっちゃったよ」
言い出しっぺのAさんが、いきなりNさんに見つかってしまったらしい。
「見つかっちゃダメじゃないですか!ドッキリになりませんよ」と私。かくして、「ユルいドッキリ計画」は失敗した。
講演会場に行くと、どちらかといえば地味なテーマであるにもかかわらず、お客さんでほぼいっぱいである。
お客さんの層を見て驚いた。
若い人が多い。しかも若い女性が、である。なかには、女子高生もちらほらいるではないか。どちらかといえば地味で難しいテーマであるにもかかわらず、なぜなのだろう。
「きっとNさんのファンクラブの人たちだろう」と、Aさんが冗談交じりで言う。なるほど、そうなのかもしれない。
それにしても、私がたまにやる講演会とは、お客さんの層が全然違う。
まず、私の講演会には、そんなにたくさんの人が来ない。それに、お客さんのほとんどが、かなりのご高齢の方である。少し大きめな声で話したり、大きめな字で書いたりしなけれならない場合がほとんどである。
この会場では、講演の最中に聴衆の方の補聴器がハウリングする、なんてことはないんだろうな。
もうひとつ驚いたこと。
それは、来ている人の服装がおしゃれである、ということだ。
AさんもSさんも、休日の私服がおしゃれであることに驚いた。おしゃれ、というより、こざっぱりしている、というべきか。さすが、この分野の専門家はセンスが違うなぁ。
そればかりではない。聞きに来ている他のお客さんもまた、どことなくこざっぱりしている。
ジャージを着て講演会を聞きに来たのは、私だけのようである。
さて、講演の内容の方は、Nさんのよどみないお話にすっかりと魅了された。門外漢の私にも、十分に楽しめる、知的興奮に満ちたお話であった。
(Nさんはふだんこんなに面白い講義をやっているのか。それにひきかえ俺ときたら…)と、軽くへこみもしたのだが。
講演会が無事終わり、Nさんを含めた4人で居酒屋へ。
5時から飲みはじめ、気がついたら10時をまわっていた。
前回の日記に、一緒に飲む相手がいない、などと書いてしまったが、そんなことはないかも知れない、と思いなおした夜だった。
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コメント
先輩、ご無沙汰しております。吹奏楽OBのGONです。久しぶりにブログを拝見したところ、帰国されていたんですね。
3月終わりに毎年恒例になっているOBメンバーで飲みに行きましたが、みなさん元気でした。今年は夏にもやりましょうという話が出ていましたが、ぜひまた飲みに行きましょう。
投稿: GON | 2010年5月 5日 (水) 17時06分
5月は2週続けてOBの人たちと会いました。みんな変わっていませんね。
投稿: onigawaragonzou | 2010年5月 9日 (日) 20時49分