御柱祭!パート2
5月2日(日)
妻と妻の両親、そして妻の妹夫婦と一緒に、1カ月ぶりの長野である。
休日だった先日(29日)、美術館に行ったときに、着ていく服がまったくないことに気づいた私は、「休日に美術館に行くのにふさわしい服」を買おう、と思いたつ。そこで、高原にあるアウトレットに服を探しにいく。
だが、この体型にこのセンスでは、そんな服がそうそう見つかるはずもない。ほとんどの店が、
「おまえのような体型のヤツが来る店ではねえ!」
といったオーラを漂わせているのである。
でも、それが幸いしてか、入るべき店も限られていたおかげで、さほど迷うことなく、服を購入。というより、選択肢がほとんどなかったのだが。
買った服が、美術館に来て行くにふさわしい服かどうかは、わからない。
5月3日(月)
先月に続き、7年に一度開催されるという御柱祭を見に行く。今回の旅の目的の一つが、実はこれであった。
先月は、御柱を山から里へ運び出す「山出し」が行われ、「木落とし」とか「川越し」といったイベントが行われた。今回は、「里曳き」といって、里に下ろされた御柱を、人々が曳きながら町中を練り歩き、最後に、大社境内の宝殿の四隅にそれぞれ御柱が建てられる。これを建御柱という。これがいわば御柱祭の総仕上げである。今週は、上社前宮と上社本宮の御柱、計8本の里曳きである。
午前11時頃茅野駅に到着。そこから歩いて御柱の里曳きが行われている場所を目指す。
聞くと、上社前宮の御柱は、すでに昨日のうちに前宮に到着し、あとは御柱を境内に建てるのみであるという。上社本宮の御柱は、里曳きの最中とのことだった。
本宮に向かう御柱の行列を見たあと、建御柱を見るために、手前の前宮まで歩いて戻ることにする。
御柱祭は、この地域のさまざまな地区の人たちが力を合わせて行うお祭りである。そのため、御柱祭の参加者は、各地区ごとに、その地区名を書いた法被を着ている。その法被もバラエティに富んでおり、見ているだけで楽しい。
そのバラエティに富んだ法被の中には、背中に大きく「斧」と書かれたものもある。そして「斧」と書かれた法被を着ている人は、実際に斧を持っている。「斧係」という意味であろうか。
そのつもりで見ると、「斧」と書かれた法被を着ている人が思いのほか多いことに気づく。よく、化学薬品を積んでいるトラックが、「毒」と書かれたプレートをつけて走っているのを見かけることがあるが、あんな感じがして、なんとなく可笑しい。
私はなぜかこの「斧」と書かれた法被がひどく気に入ってしまい、この法被を見るたびに、ついカメラを向けてしまう。しまいには、「一枚の写真の中に、「斧」と書かれた法被を着ている人が何人おさまるか」という、実にクダらない遊びを思いつくに至る。
午後2時過ぎ。歩きながら写真を撮りまくっているうちに、前宮に到着。ちょうど前宮一の柱は、直立に建てられたばかりで、歓声があがっていた。
一の柱に続き、他の3本の柱も順々に、かけ声にあわせてゆっくりと立てられてゆく。
御柱が境内の所定の位置に到着すると、およそ1時間ほど時間をかけて、御柱を綱で引っ張って直立に建てる作業が行われる。数十人の男たちが御柱の上に乗ったままの状態で建てられていくので、御柱が直立する頃には、数十人の男たちが、柱の高いところにしがみついている格好になる。
御柱が直立に建てられると、所期の目的は達したわけで、メデタシメデタシとなるのだが、このあと、御柱の上に取り残された男たちは当然、御柱から降りなければならない。
狭くて高い御柱の上から、一人一人が、足場を確認しながら、綱をつたって地上に降りてくる。さながら綱渡りのようである。
綱をつたって降りる男たちは、降りてくる途中で、いったん頭を下にして逆さ吊りのような格好をする。そしてそのあと、再び体勢を立て直し、するすると地上に降りるのである。
ところがこれが意外と難しいようである。なかには、逆さ吊りになったまま体勢を立て直すことができないまま、ズルズルと降りてしまう人もいた。逆さ吊りの状態から、体を反転させてもとの体勢に戻すには、相当な踏ん張りが必要なようだ。
この一連の動きを、下から見ているだけでも、高所恐怖症の私にとっては、ゾクゾクしてしまう。とくに御柱のいちばん上の方でしがみついている人は、地上に降りるまで、かなりの時間、そのままの状態で待機していなければならないし、なにより、直立している御柱は、左右にかなり揺れるのである。逆に、あの大人数の男たちが、御柱にしがみついているにもかかわらず、不安定に直立している御柱が倒れないことの方が、不思議であった。
御柱祭は、「木落とし」「川越し」などがメインの「山出し」が有名だが、「里曳き」まで見ることをおすすめする。できれば、御柱が建ったあとに、御柱にしがみついていた男たちが地上に降りるまでを見届けるとなお面白いだろう。建御柱までの一連の行事が終わり、緊張感から解放された様子が、何とも心地よいのである。
気がつくと午後4時をまわっていた。私たちは前宮をあとにした。
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