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続・内弁慶ブルース

6月25日(金)

少し前に「内弁慶ブルース」という文章を書いたら、「なんてヒドイ息子だ」と、読者に思われたらしい。

…という被害妄想が頭をよぎる。

ご安心を。ちゃんと、両親をさくらんぼ狩りに連れて行きました。

ただ、金曜のお昼から観光案内しようと思ったものの、午後に急に会議が入ってしまったため、いったん私のアパートでくつろいでもらうことにして、夕方合流し、車で温泉旅館に向かい、宿泊した。

翌朝いちばんでさくらんぼ狩りをして、昼食にそばを食べ、お昼過ぎに駅まで送った。

私は午後2時から職場で研究会があったため、お昼までしかつきあえなかったのだ。

それでも、温泉とさくらんぼとそばをクリアしたから、よしとするか。

さて、私が内弁慶になるのには理由がある。

韓国に滞在していたときよく見ていた「屋根を突き抜けてハイキック」というシットコムの中で、こんな話があった。

高校生の男の子が、2階の自分の部屋で、パソコンを使って、自分の片思いの相手のことを思いながら妄想恋愛小説を書いている。

そして、いい場面にさしかかると、1階から大きな声で母親の声。

「ご飯ができたから、早く降りてきなさい!早く来ないと、ご飯が冷めちゃうわよ!」

「わかったよ。いまおりていくよ」

ため息をついて、階段を下りてゆく。

そんなシーンが、何度かくり返される。

見ていて、「韓国の高校生にとっても、あるあるネタなんだな」と思った。

高校生のとき、2階の子機を自分の部屋にもっていって(まだ携帯電話がなかった時代)、友達と長電話をしていると、1階から、信じられないくらいデカい声で、

「お風呂!お風呂入りなさい!お風呂。冷めちゃうよ!」

と母親の声。あれには、本当にむかついたものだ。

とにかく、ウザイ存在だったのである。

そういうウザさは、最近もたまにある。

数年前のことだったか、電話が来た。

「いまテレビでやってたんだけど、今年の24時間テレビのマラソンランナーが決まったよ。誰だか知ってる?」と母。

「知らねーよ」

だいいち、こっちはそんなことにまったく興味がないのだ。

「エド・はるみだって」

「え?」

「エド・はるみ。グーの人だよ。グーグーのエド・はるみ」

「知るか!そんなもん」

だいたい、自分の母親が流行のギャグを得意げに言っているのを見る時ほど、ウザイと感じることはないのだ。それに私はそんな「エンタの何とか」的な笑いに背を向けて生きているし。

父親もヘンな人である。

まったく趣味がない。本を読んだりとか、映画を観たりとかも、一切しない。ギャンブルもしなければ、盆栽もしない。

ふだん、どうやって時間をつぶしているんだろう、と不思議である。

これも数年前の話だが、東京の多摩川で、アザラシが発見されたというニュースがあった。「タマちゃん」と名付けられたそのアザラシが、今度は多摩川のどの辺に現れるのか、ということが、ワイドショーで連日とりあげられていたのである。

はっきり言って、どーでもいい話である。

ところが暇をもてあましていた父は、そのワイドショーを見て、自転車で多摩川べりを走って、タマちゃんを探しに行った、というのだ。たぶん往復で1日は使っただろうから、ちょっとした、小旅行である。

もう、あきれてものが言えない。

次に、耐震偽装工事がワイドショーでとりあげられた。姉○物件などと揶揄されたマンションが、画面に大きく映った。

それを見た父は、「自転車で行ける距離だな」と思い、今度はそのマンションを見に自転車で出かけたという。

で、「ここがそのマンションかあ」と見上げて、家に戻ったという。

人間、暇をもてあますとこうなるんだ、という見本のような人だ。

私が内弁慶になる理由が、おわかりいただけたか。

いや、かえって私がヒドイ息子であることが強調されたかもしれない。

最近、妻がよく私に言う。

「お父さんと、しゃべり方がそっくりになってきたよ」

それを言われるたびに、私はひどく落ち込むのだ。

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