喜劇 面接必勝法
6月21日(月)、22日(火)
4年生の就職活動は、相変わらずタイヘンなようである。
いろいろと悲喜こもごもの話を聞くのだが、ここに書けないこともたくさんある。
最近は、「面接カード」の添削、というのを頼まれる。
というか、この2日間、それしかやっていない。
そのことを妻に話すと、
「就職活動をしたことのない人が指導するなんて、詐欺まがいだねえ」と。
「そんなことはないよ。寅さんだって、恋愛指南をしてうまくいってるんだぜ」
「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」を念頭に置きながらの反論。
さて、面接カードの中には、自分の長所や短所について書く欄がある場合があるという。
ある学生が質問にきた。
「長所、というのはなんとなくわかるんですけど、短所は、どこまで書けば大丈夫なんですか?」
「どういうこと?」と私。
「たとえば私、いつも寝坊して遅刻するんです。それって、短所として書いちゃいけませんよね」
「そうだね」
「つまり、どの程度まで自分の短所をさらけ出してもいいものなのかな、と」
短所だからといって、人としてダメな部分を書いてよい、というわけではない。
たとえば、
「約束の時間に必ず遅刻する」
とか、
「かっとなるとすぐ人を殴ってしまう」
とか、
「酔っぱらうとタチが悪い。いや、酔っぱらわなくともタチが悪い」
とか。そういうのはダメである。
そこで私が答える。
「短所、といっても、見方によっては長所にもなりうるようなことを、言えばいいんじゃないかな」
「どういうことですか?」
「たとえば、『自分は優柔不断で、物事をすぐに決められないところが短所です』と答えたとするよね。でもこれは別な角度からみれば、『物事に対して慎重に判断する性格だ』ととれなくもない。つまり、長所にもなりうるわけだ。だから、見方によっては長所ともなりうるようなことを、短所としてあげればいいんじゃないかな」
「なるほど、わかりました」
我ながらいい答えだ。
そのことを電話で妻に話すと、
「そんなこと、あたりまえでしょう」
という。
「韓国の語学院の授業で学生と一緒に『面接必勝法』というビデオを作ったとき、私もそういう風に台本に書いたからね」
思い出した。外国人留学生が、韓国の大学に入学する際に必ず通らなければならない面接試験。その面接試験の対策になればと、妻が脚本・演出・撮影を担当して再現ドラマ風に仕立てた「面接必勝法」。語学院の先生の間でも好評だったものだ。たしかその中に、「面接でもし自分の長所と短所を聞かれたら」というシーンがあったな。そのとき、受験生を演じていた中国人留学生が、
「私の短所は、最新の流行に疎くて、なかなかいま流行っていることに追いつけないことです」
と答えていた。これは裏を返せば、
「私は、流行に左右されない人間です」
と言っていることにもなる。
そこで、どういう「短所」がいちばん面接担当者に喜ばれるか、というのを、妻とふたりで考えることにした。
で、出た結論は次の通り。
面接担当者「あなたの短所を教えてください」
学生「あのぅ、…飲み会とかで、うまく盛り上がれないことです」
面「どういうことですか?」
学「大勢の人がいる飲み会で、つい、まわりの人のグラスが空いてないだろうか、とか、気になってしまうんです。それで、空いているグラスにビールを注いだり、水割りを作ってさしあげたり、注文をうかがったりと、まるで店の人間みたいにふるまってしまうのです」
面「ほほう」
学「それが私の短所です」
…これで、面接担当者のオジサンは、イチコロなのではないか?
と、ここまで考えて、「今どきそんなことで喜ぶ時代錯誤の面接担当者なんて、まさか、いないよねえ」とふたりで笑う。
だから、これは冗談です。決して面接で言わないように。
※タイトルの「喜劇 面接必勝法」は、昔の喜劇映画「喜劇 競馬必勝法 一発勝負」(瀬川昌治監督、1967年)のタイトルをもじったものです。念のため。
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