「モリエ ポム」、副教材へ!
7月3日(土)
あいかわらず、韓国語日記を続けている。
といっても、最近はそうそう現実逃避ばかりはしておれず、毎日書くことはできない。週に2,3日といったところか。
いまは、「3級6班」編の翻訳が、そろそろ終わりにさしかかっているところである。
「こわい話」「7時間耐久授業」「幸せって何だっけ?」といったエピソードは、いずれも翻訳のしがいがある。
「こわい話」は怪談、「7時間耐久授業」は考えオチ、「幸せって何だっけ?」は人生論、と、それぞれ方向性が違う文章である。それを、韓国語でどうやって「読ませる」かが、腕の見せ所である。
せっかく勉強した韓国語を、まったく無駄につかっているような気がするが。
語学院の数人の先生が、いまでも細々と読んでくれていて、たまにコメントをくださる。ありがたいことである。とくに3級の時に習ったナム先生は、3級6班のエピソードのほとんどに、適切で丁寧なコメントをくださる。それが、韓国語日記を続ける励みになっている。
さて数日前、「テレビ通販番組を作ろう」を翻訳した。
これは、私にとって思い出深いエピソードである。
3級のマラギ(会話表現)授業で、「みんなで広告を作りましょう」という課題があった。いくつかのグループに分かれて、架空の通販番組を作って、みんなの前で発表する、というもの。
このとき、同じグループだったクオ・リュリンさんが「養毛剤」の通販番組を作ろう、と提案した。そして私は、その養毛剤の商品名を「モリエ ポム」と命名した。直訳すると、「頭の春」である。
この「モリエ ポム」。言葉の響きがいいので、私はひどく気に入っていた。「トアエモア」みたいに、どことなくフランス語の雰囲気がただよっていたからかも知れない。
このときにマラギ授業を担当されていたナム先生も、ひどく気に入られたようで、私がその授業の時に「モリエ ポム」というたびに、その言葉に反応されて、爆笑していたのである。
商品名の響きだけではない。ル・タオ君のみごとなディレクションのおかげで、リン・チアン君も含めた4人で制作した「モリエ ポム(頭の春)」の即興通販番組は、3級6班の間でも好評だったのである。
そのことを綴った日記が、「テレビ通販番組を作ろう」である。これを韓国語に翻訳したら、今日、ナム先生から、次のようなコメントが入っていた。
「私は本当にこの広告が画期的だと思いました。 いま、3級のマラギ(会話表現)の第30課の副教材には、この「モリエ ポム([頭の春)」の広告が例示として載っているんですよ。 今見ても相変らずおもしろいです!」
なんと、「モリエ ポム」が、韓国語の副教材に例示として紹介された、というのである!
ここで少し説明を加えておくと、私が学んだ大学の語学院では、各級ごとに、市販の教材(2種類)のほかに、その大学の語学院が独自に作成した副教材を使用する。この副教材は、語学院の先生方が、話し合いながら作りあげてゆく、いわば手作りの教材である。毎学期(3カ月ごと)、前学期の授業をふまえて、適宜改訂されているらしい。
「モリエ ポム」の即興通販番組を授業で聞いていたのはナム先生しかいないから、副教材を作る会議の中で、この「モリエ ポム」を例示として掲載しましょう、と提案したのは、ナム先生をおいてほかにない。そして、それが教材として採用されたのだ!
で、いまに至るまで、その大学の語学院に通う後輩の留学生たちが、それを学んでいる。
これって、すごいことではないか?!
たとえていえば、ユーミンの歌が教科書に採用されるようなもんだろ?(いやいや、レベルが全然違うし、「ユーミン」というたとえも古いなあ)
いずれにしても、私たちは、間違いなく、語学院の韓国語の授業に、なにがしかの影響を与えたのだ。つくづく、よい仲間たちに恵まれたものだ、と思う。
この嬉しさをこえる出来事は、いままでもなかったし、これからもないだろうな。
フラワーカンパニーズは歌っている。
「虎は死んだら 皮を残すという
僕はいったい 何を残せるだろう?」(「40」より)
40歳になった自分を歌った歌である。
奇しくも、3級6班で勉強していたとき、私も40歳だった。
虎は死んだら、皮を残すという。
40歳の私は、韓国の語学院を去って、「モリエ ポム(頭の春)」を、たしかに残したのだ。
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コメント
早速フランス語辞典で調べてみると、「モリエ ポム」に一番近いのは、morille et pomme(モリユエポム)で「編笠茸とリンゴ」の意味。なんだか八百屋みたいですな。
僕としては mort et pomme (モールテポム)、つまり「死とリンゴ」という方が哲学ぽくて好きですが、見方を変えると、失敗したウイリアムテルのようでもあります。
ちなみに素直に日本語にすると「森へポン」となって、なんだか姥捨山みたいになっちゃいました。
投稿: こぶぎ | 2010年7月 4日 (日) 17時00分
なるほど。なかなか面白いですなあ。ちなみに「コンブエ シン(勉強の神)」はどうなりますか?「ドラゴン桜」のリメイクドラマのタイトルですが。ちょっとフランス語っぽくないですかね。
投稿: onigawaragonzou | 2010年7月 5日 (月) 00時06分
なかなか難問でしたが、Comprenez Chine! (コムプレネ シン)でいかがでしょう。意味は「中国を理解しろ(命令形)」です。
フランス語の過去分詞が「エ」で終わるものが多いので、韓国語の「エ(日本語の「に」)」と一見似た感じになりそうですが、フランス語は後置修飾の言葉なので名詞の後ろに(過去分詞にした)修飾語が来ますから、意味のある言葉にしようとすると、結局、英語の and に当たる et(エ)で処理することになります。トワエモワ(you and me)がそれですね。
また、パッチムに関しても、名詞・形容詞の順序が韓仏で逆なので、やはりリエゾンとして使えないんですね。そこは逆に語順が自由な韓国語の方を変えて、例えば「ポム、モリエ」にすると、pomme mouille(ポム ムーリエ:湿ったジャガイモ、eにアクセント記号)と、頭に載せたくないものになります。「韓国語は倒置させるとフランス語空耳にしやすい」という命題が今回の経験から導けそうですが、果たしてこのマニアックな知見を必要とする人がいるかどうかは疑問です。
ちなみにyoutubeで「中文空耳」を検索すると、中国のK-POPペン(中国語だと「ファン」は「歌迷」ですな)がめちゃくちゃな漢字で韓国語歌詞の音写字幕をつけていますので、おもろいです。お経の時代から、どこでも考えることは同じですな。
追伸:「過速スキャンダル」の日本版DVDが今日入手できたので、早速このコメント打ちながら鑑賞中です。本編の副音声に、出演者3人+監督のオーディオコメンタリーがついていて(日本字幕あり)秀逸。やはり子役がたまりませんなあ。
あと、少女時代の日本ショーケースにこっそり参戦予定。
投稿: こぶぎ | 2010年7月 6日 (火) 22時59分
上の文で韓国語の「エ(日本語の「に」)→(日本語の「の」)に訂正します。「に」も「の」もカナだと「エ」なので混同しました。みあん。
投稿: こぶぎ | 2010年7月 6日 (火) 23時06分
たしかに、タモさんがとりあげてくれるか、NHKのハングル講座とフランス語講座あたりがコラボして「空耳アワー」的なコーナーを作るかしないかぎり、この知見を披露する機会はないでしょうな。でも、いまなら第一人者になれるかもしれないですよ。
過速スキャンダル、私もさっそく注文。なにしろ、韓国の映画館に初めて入って観た思い出の映画ですから。やはりあの子役は面白いでしょう。
とうとう少女時代が日本デビューですか。グループ名と同じタイトルのヒット曲「少女時代」は、われらがイ・スンチョルの名曲のカバーであることは、常識でしょうかね。日本に井上陽水の「少年時代」あり、そして韓国にイ・スンチョルの「少女時代」あり、です。
それと、私が敬愛する司会者、キム・ジェドン氏が、地上波の番組を全て降板したというニュースが…。うーむ。時代は移り変わっていきますなあ。
投稿: onigawaragonzou | 2010年7月 7日 (水) 19時27分