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神は降りるか

7月19日(月)

3連休の3日目の午後、ようやく、原稿を書こうというやる気が出てくる。

昨日も、まったくやる気が起きず、結局、黒澤明監督の「野良犬」とか、ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」をDVDで見てしまった。

どちらも文句なく面白い。とくに「殺人の追憶」は、何度見てもいいなあ。

映画の感想はさておき。

毎度毎度、原稿をかかえるたびにこんなことになるのは、いいかげん勘弁してほしい。

ほかの同業者も、こんな感じなのだろうか。

いや、違うだろう。もっとちゃんとしているはずだ。

どうすれば、原稿を書こうというテンションが上がるのだろうか。これは私にとって、終生の課題である。

8年くらい前のことだったか。

いよいよ原稿の締切がシャレにならなくなって、なんとかして原稿を書かなければならなくなった。だが、気ばかり焦って、まったくどうにもならない。

そこで思いついたのが、「缶詰」になる、ということ。

ほら、よく有名な作家先生が、ホテルに缶詰になって書く、なんてことがあるじゃない。あれを見習おうと考えたのである。

幸い、当時住んでいたところの近くには、風情のある温泉旅館があったので、そこに泊まって、原稿を書くことにした。

ひなびた温泉旅館に泊まって原稿を書くなんざ、いかにも文豪がやりそうなことではないか。

ところが、である。

温泉に入って、ビールなんか飲んじゃって、部屋でテレビをつけたら、映画「エクソシスト」をやっているではないか。

久しぶりだなあ、「エクソシスト」、なんて思いながら、つい見入ってしまい、気がついたら、夜11時。

ビールの酔いがほどよくまわったせいか、そのまま眠ってしまい、結局、原稿は書けずじまいだった。

いったい、何のために泊まったのか?これではまるで、「エクソシスト」を見るために泊まったようなものではないか!

この逸話だけとってみても、私がいかにダメ人間であるかがわかろう、というものだ。

…と思ったら、こんな話を聞いたことがある。

私と同世代のラジオDJが、以前、こんなことを言っていた。

エッセイ集を出すことになっていた彼は、出版社から再三、原稿の催促をうけているにもかかわらず、締切がとっくに過ぎても、まったく書く気が起こらない。出版社も、ブチギレ寸前である。

とはいえ、家にいても原稿を書く気が起こらない。これはさすがになんとかしなきゃ、と思った彼は、原稿を書くために、とんでもない妙案を思いついたのである。

それは、寝台特急の個室に乗って、そこで原稿を書く、という作戦である。

原稿を書くテンションを上げるためには環境を変えなければならない、と思った彼の、仰天の策である。

寝台特急、という閉じこめられた空間に自分を追い込めば、原稿を書くよりほかにやることがなくなる。それに、夜だから、景色を楽しむ必要もない。少なくとも、10時間くらいは、原稿を書く時間を確保できるわけである。しかも、朝になれば、まったく違う土地に到着するので、旅行気分も満喫できる。

その作戦を思いついた彼は、さっそくそれを実行にうつすことにした。みどりの窓口に行って、行き先はどこでもよい、その日、できるだけ長い時間乗っていられる寝台特急の切符をとったのである。「サンライズ出雲」であった。

そして夜、東京を出発。

ところがここで思わぬ問題が起こる。

実際に寝台特急の個室で、パソコンに向かって原稿を書いてみると、けっこう揺れるので、書いていてすぐに気持ちが悪くなるのである(私も新幹線の中で経験があるからよくわかる)。乗り物酔いしやすい人にとっては、あまりすすめられる方法ではない。

で、彼は「いったん横になろう」と思い、横になった。

次に気がついたときには、列車の窓から宍道湖が見えた、という。

つまり、ぐっすり寝てしまったのである。

結局、原稿は書けずじまいだった、という。

いったい何のために、別に乗りたくもない寝台特急に乗って、別に行きたくもない島根県に行ってしまったのだろう、と彼は後悔した。

なんともマヌケな話だが、私にはこの話が、自分を見ているようで、笑えないのだ。

私はいつまで、こんな試行錯誤をくり返すのだろう。

そしてこんな試行錯誤をくり返しながら、「やる気の神様」が降りてくるのを、今日もひたすら待っているのだ。

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