Wii Fitの屈辱
7月23日(金)
東京の妻の実家で任天堂のWii Fitを買ったという。
金曜日の夜に東京に帰ると、私の似顔絵もすでに登録されていた。
Wiiでは、自分の似顔絵を描いたキャラクターを登録して、画面ではその人間型のキャラクター(アバター)がいわば私の分身として活躍する。これをMiiというのだそうだ。
こんなことは、わかりきったことなのかもしれないが、生まれて初めてWiiにふれた私にとっては、なにもかもが新鮮である。
で、Wii Fitとは、Wiiのゲームを楽しみながら体力作りをする、というゲームソフトらしい。
さっそく、体重計に似た形のWiiボードというものに乗って、私の身体データを登録しなければならない。そうしなければ、トレーニングなり、ゲームなりができない、というのである。
さて、困ったことになった。
Wiiは、家族が団らんする居間にある。そこでは、妻と、妻の母が、じっと画面を見つめている。
つまり、私の身体データが、妻と妻の母(義母)にだだ漏れになってしまうのである。
義母はもちろん、妻にも、自分の体重を明かしたことがない。体重だけではない。貯金の額もだ。この二つは、これまで完全に秘密を守っていたのだ。
いったい、このボードの上に乗ると、どんなデータが暴かれてしまうのか?ついに体重が暴かれてしまうのか?そう思うと、不安で仕方がない。
「ちょっと席を外してください」とも言えないしなあ。
これが、自分の実家であれば、得意の「内弁慶」で「部屋から出てけ!」と言えばいいのだが、妻の実家となるとそうはいかない。
妻は「ちょっとお風呂入ってくる」といって、席を外した。
だが、義母は居間に座って画面を見つめたまま。
いつまでも時間を稼げないな、と観念してボードの上に両足を置いた。
「あなたの体を認識しています」と、画面が伝える。
やがて、画面に、
「体重を見ますか?」
という質問が出た。
私は迷わず「いいえ」を選んだ。
そりゃそうだよな。今のご時世、他人に体重を知られたくない、という人も多いはずだ。さすが任天堂、配慮しているなあ。
次に、BMIを測定する。BMIとは、身長と体重から算出した数値のことで、この数値が22に近いほど、標準体型なのだという。出た数値に応じて「標準」「太りぎみ」「太りすぎ」「やせぎみ」「やせすぎ」などの判断が示される。このBMIについては、スポーツクラブに入会したときにも調べたので、よく知っていた。
これもやはり、画面には数値が出なかった。ホッとしたのもつかの間、次の画面に驚いた。
「あなたは…太りすぎです!」
ある意味、数値よりもキツい一言である。もちろん、自分が「太りすぎ」であることは、スポーツクラブで測定したときに知っていたが、問題は、そのことをはっきりと、義母に見られた、ということである。
むろん、私の体型は明らかに太っているので今さら驚くべきことではないのだが、それでもWiiにあらためて「太りすぎ」と宣告されたのを見て、義母はどう思ったのだろう。しかも、「太りぎみ」ではなく、「太りすぎ」である。
ダメな婿だ、と思ったに違いない。
さらに、驚くべきことが起こる。
「太りすぎ」と宣告された途端、画面の私のキャラクターの体が、急速に膨らんでいったのである!
つまり、画面上の私も「太りすぎ」の体になっていったのだ!
それはあたかも、命が吹き込まれていくかのようであった。
次にバランス感覚のチェックである。
自分の体の重心がどこにあるか、とか、バランス感覚がどの程度なのか、などを確かめる。
しかしこれが、思いのほかむずかしかった。
そしてついに結果が出る。
「あなたのバランス年齢は」
……
「50歳です!」
えええぇぇぇ?!
このときも義母は画面を凝視。
自分の娘の夫が「太りすぎ」でしかもバランス年齢が「50歳」だという事実を目の当たりにして、義母はどう思ったのだろう。
ダメな婿だ、と思ったに違いない。
いったい、この3週間ほど通い続けたスポーツクラブは、何だったんだろう?まったく効果があらわれないではないか!
ひどく落ち込んだ。
妻が居間にもどってきた。
「あら、Miiがずいぶん太ったね」
結論。私はWii Fitを楽しめない。なぜなら、屈辱的なことが多すぎるから。
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