楽園
8月15日(日)
お盆休みは、特筆すべきことがなかった。
強いて言えば、あるところから「お盆明けまでに、100字前後の文章を100個以上書いて出してください」という依頼が来て、「オレは駆け出しのフリーライターか?」と思いながら、ほとんどの時間をそれに費やしたことだ。
仕方がないので、見たドラマの話をしよう。
民放の地上波で、テレシネマという、日韓共同制作のドラマシリーズが、日曜の夜に放送されている。
日本人の脚本家の脚本を、韓国人のスタッフとキャストでドラマ化する、というシリーズらしい。
私がみたのは、岡田惠和脚本、キム・ハヌル主演の「楽園」というドラマである。
先週、前編を見て、この日、後編を見た。
数々の韓流ドラマを見つくしている妻は、この種のドラマに難色を示す。
日本人の脚本家によるドラマの展開のさせ方や、語りのペースというのが、どうにも肌に合わない、というのだ。なにより、その照れくさい語り口が、お気に召さないらしい。韓国のドラマに、すっかり慣れてしまったためであろう。
かくいう私は、実はそうした照れくさいドラマが嫌いではない。
実際にドラマを見てみる。
妻がいうように、ストーリーは、明らかに日本的な展開のドラマである。韓流ドラマフリークの妻が物足りなさを感じるのも、わからなくもない。
だが私は、十分に満足した。
一つは、キム・ハヌルがきっちりと仕事をしていたからである。私にとって、キム・ハヌルは、「ザ・女優」というべき位置にいる人で、キム・ハヌル先生がいい仕事をしてくれさえすれば、私は満足なのである。
もう一つ、お盆のこの時期に、ちょっと照れくさくなるような展開のドラマを見ることは、悪くない。夏休みのテンションで見るには、ちょうどいいドラマなのだ。
さて、その「楽園」とは、どのような内容のドラマなのか。
刑務所を出所したひとりの女性(キム・ハヌル)が、たまたまみつけた「楽園」と書かれたチラシを手に、人生をやりなおそうと、小さな島にわたる。そこには、かつてその島を楽園にしようと夢みた若者たちがいた。つぐなったはずの罪に苦しみ続ける女性は、その島に住む人々とふれあいながら、徐々に自分の心を取り戻していく。
ごくごく簡単にいえば、そんな内容である。
このドラマに、こんなシーンがある。
出所したばかりの女性は、たまたま汽車のなかでとなりあったアジュンマ(おばさん)から、たくさんの花の種を買う。その花の種をたずさえて、小さな島にわたるのである。
やがてその女性は、島のあちこちに、その種をまく。ドラマのラストでは、彼女がまいた種が黄色い花となって、森のなか一面に咲きほこるのである。それはまるで、彼女が夢みた楽園であった。
これが実に美しい。
いや、そもそもこのドラマ全体が、じつに美しい風景でいろどられているのだ。それだけでも、このドラマは、見る価値がある、と個人的には思う。
あの島は、どこなのだろう?韓国にある島であることは間違いない。いちど、訪れてみたいものだ。
さて、翌日(16日)。
滞在先(日本のとある場所)の周辺を車で走っていると、途中、森の中に入った。
「あれ?」横に座っていた妻が言う。
道路の両側に広がる森を見ると、なんと、昨日のドラマで見たのとそっくりな風景が広がっているではないか!
思わず車をとめて、森の中にしばしたたずむ。
「楽園」は、ここにあったのか?
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