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欲の重さ

9月9日(木)

昨日から韓国に滞在している。この夏、3度目の韓国である。

自分では旅慣れているつもりだが、いつも荷物だけは、旅慣れない感じである。必要以上のものを持っていってしまうのだ。

いや、これは旅に限ったことではない。日常生活においてもそうである。

私がリュックを背負っている姿を見た人は、必ずといっていいほど「それ、重そうですね。何が入っているんですか?」と聞いてくる。たいした物は入っていないのだが。

「それは、欲の重さだよ」と、妻は言う。なるほど、言いえて妙である。かばんの重さは、欲の重さを示しているのかもしれない。

先ごろなくなった、韓国で有名な僧侶兼随筆家のポプチョン僧侶の代表的随筆集に『無所有』という本がある。所有にこだわらず、すべてを捨てて生きろという教えが書かれているが、私はそれを3種類(原書、日本語翻訳版、小説版)持っている。『無所有』を3冊持っているとは、なんと本末転倒なことか。

今日、私たちの研究チームに韓国留学中のときの私の指導教授が合流されて、夕食をご一緒した。

私の指導教授は、その業界でもかなり力のある方である。大学や学会などで数多くの要職をつとめられている。

慕う人も多いが、敵も多い、と聞いた。たぶん、イメージ的には、「剛腕」という言葉がふさわしいかもしれない。「剛腕」という言葉で連想される政治家を思い浮かべればよい。

しかし、1年以上、そばで話を聞いていて、実はきわめて内省的な方だ、ということに気づいた。

そして、人間を、実によく見ておられる。

たしかに強引なところがあるが、人間的魅力にあふれた方なのだ。

その点を知らない人にとっては、単なる「剛腕」にしかうつらず、敬遠する人がいるのかもしれない。

だが、知っている人にとっては、魅力的な人なのだ。敵が多い反面、それ以上に慕う人が多いのは、理由があることなのだ。

いい師にめぐまれたものだ、と思う。

夕食のときも、指導教授の話の面白さに、すっかり引き込まれた。

夕食後、食堂を出て指導教授とお別れするときのこと。

「リュックが重そうだな」と先生が私におっしゃった。

「ええ、いろいろと入っていますので」と答えると、

「欲の重さだな」

とひと言だけおっしゃった。

なんと、妻と同じことをおっしゃったぞ!

やはり私の指導教授だ!私のことを、実によく見ていらっしゃる。

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