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ビバ!OB楽団その4 アンコール

10月10日(日)

最後の曲、「トトロ」の曲紹介が終わって、ひとまずホッとする。

なぜなら、これで私は、舞台に出なくてよくなるからだ。

あとは、最後の曲が終われば、アンコールになだれ込むだけだ。もう、司会は必要なくなる。

だが、あとひとつ、仕事が残っていた。

アンコール曲は、

1.ルパン三世

2.サザエさんア・ラ・カルト

の2曲である。

「ルパン三世」は、定番中の定番。わが楽団でも、毎回のようにアンコールでこの曲をやっている。

「サザエさんア・ラ・カルト」は、サザエさんのなかで流れるBGM をメドレーでまとめたもの。

私の最後の仕事とは、2曲目の「サザエさん」を演奏している最後のところで、影マイクでお別れのあいさつと次回予告を言って締める、というもの。

「…というわけで、日曜日のひととき、いかがだったでしょうか。最後は、日曜日の定番、『サザエさん』の音楽とともに、みなさんとお別れしたいと思います。さて次回は、来年5月3日、いよいよ第20回定期演奏会が開かれます。その時までみなさん、さようなら!」

このセリフを、演奏している曲のエンディング部分にかぶせてしゃべるのである。

そして、曲が終わると同時に、このコメントも終わるようにする。

これを提案したのも私。実はこれも、一度やってみたかった。

曲のタイミングに合わせて喋るなんて、なんか、FMのDJぽくって、いいじゃん。

しかし、これもリハーサルでは苦労した。

まず、曲の終わるタイミングに合うように、セリフを何度もつくり直す。

さらに、曲にかぶせて喋ると、客席では声が曲に消されてしまい、何を喋っているのかまったくわからなくなるのだそうだ。それに加えて、私の滑舌の悪さである。

とりあえず、曲の音量を調整したりして、曲とセリフのバランスをみる。

うーむ。めんどくさいなあ。やっぱり、こんな提案、しなきゃよかったなと、後悔した。

何度か練習しているうち、なんとか客席で聞き取れるようになったらしい(舞台袖では、成功したのか失敗したのかが、まったくわからないのだ)。タイミングも合ってきた。

そして本番。

タイミング的には、練習でうまくいったときのタイミングと同じだった。

私が「さようなら!」といった直後に客席から拍手がおきたから、おそらく、何を喋っていたのかは、客席に伝わったのだろう。

なんとも達成感のないまま、演奏会が終了した。

どっと疲れが出た。

演奏会終了後、客として聞きにきていた先輩や後輩たちが楽屋に遊びに来てくれたが、私を見て驚いていた。

「どうしちゃったんです?」

私は、抜け殻のように、茫然自失の状態になっていたのである。

結局、私は打ち上げが終わるまで、居酒屋で抜け殻のような状態が続き、誰とコミュニケーションをとるわけでもなく、家に戻った。

「どうしちゃったの?」と妻。

やはり家でも、抜け殻のような状態がしばらく続いた。

楽しかったが、ツラい1日だった。

ツラかったが、自分がやりたいと思っていたことを、やりたいようにできた。

ほんの少しだけ、自分がめざしていた吹奏楽の演奏会に近づいた気がした。

それもこれも、実直な団長のミツゾノ君(兄)と、これまた実直な指揮者のミツゾノ君(弟)が、私のわがままを許してくれたおかげである。

ミツゾノ兄弟に感謝。(完)

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