せんとくん狂騒曲
11月3日(水)
今年の奈良は、異常である。
この地に都がつくられて1300周年という記念のため、各地でイベントを行っているが、どこへ行っても、人、人、人、で埋め尽くされている。
ふだんであれば並ばずに入れるようなところでも、入場制限がなされ、30分待ち、40分待ち、といった状態になっている。
大型観光バスも、ひっきりなしにやってきて、強引に駐車しようとする。その姿は、見ていて少しエゲツない。
もちろん、「文化の日」に実習の日程を組んでしまったこっちも悪い。
だが、それは今に始まったことではない。毎年のように、文化の日をはさんだこの期間に実習を行っているが、これほど混雑したことは、いまだかつてなかった。
やはり今年は、異常なのだ。
そしてもうひとつ。
たしかに私も、せんとくんにいくばくか心をうばわれた。私が心をうばわれるくらいだから、人気のほどがうかがえよう。
それはともかく。
例年とは違い、落ちついて見学することができない。周りにいる多くの人にせき立てられている感じがして、少しイヤになる。
この感じ、以前にも味わったことがあるような。
そうだ!学生時代だ。
私の高校、大学時代は、「バブル経済」の全盛期で、たとえば猫も杓子もスキーに行く、なんてことがあった。ちょうど、「私をスキーに連れてって」なんて映画が流行り、ユーミンの「恋人がサンタクロース」が街中に流れていた時代である。
そういえば、冬になると、渋谷駅からスキー場に行く夜行バスが毎日何本も出ていたな。あれは、今でもあるのか?
私も高校時代、クラスの友人に誘われて断りきれず、渋谷から夜行バスで運ばれてスキーに行ったことがある。
だがその時、私は「初心者コース」で大ケガをしてしまい、さんざんなスキー初体験となった。
高校を卒業して大学に入ったばかりのころ、クラスの友人たちがクラス会をかねて「スキーツアー」を企画した。
そのころ、「スキーに行かないヤツは人にあらず」みたいな風潮があったので、ほとんどのクラスメートが行くことになっていた。「行きたくない」なんて言おうものなら、「なんで?ありえない」と言われる勢いである。だから仕方なく出席の返事をした。
だが、どうしてもスキーに行きたくなかったので、思い悩んだあげく、当日の朝、「風邪をひいていけなくなった」と幹事に電話して、結局ドタキャンした。
「せっかくのスキーに行けなくてもったいないよなあ」とみんなから言われた。だが私は、もったいないとは全然思わなかった。そしてそれ以来、いちどもスキーには行っていない。
いま、あの時のクラスの仲間で、今でもスキーに行っている人って、どれくらいいるのだろう?まったくいないのではないだろうか。
あのときの「スキー狂騒曲」は、いったい何だったんだろう?と思う。
興福寺の国宝館の前で30分近く並びながら、その時のことを思い出したのである。
そうだ、これは「バブル」なのだ。「せんとくんバブル」。あるいは、「1300年バブル」。
「せんとくんって、キモかわいい!」とか、「やっぱ阿修羅像でしょ。阿修羅を見ないなんて、ありえない」とか、みんなが競うようにしてせんとくんにむらがったり、阿修羅像を見たりする。でも、数年後はどうなっているのだろう?
せき立てられるように観光客がおしよせ、奈良の地元の人たちが「わが世の春」を謳歌しているのを見て、私がなんとなく違和感を感じていたのは、こういうことなのだ。
人の多さに足の痛みも加わり、昨日と今日の2日間で、すっかり疲れ果ててしまった。
昨日は朝9時から夕方4時まで自転車をひたすらこぎ続け、今日は、朝8時から夕方の6時30分まで、ひたすら歩き続けた。称えられるべきは、ひと言も文句を言わずついてきてくれた11人の学生たちである。ま、「1300年の節目」という歴史的瞬間を目撃したことにめんじて、ゆるしてもらおう。
明日は京都、自由行動の日。人のいないところに行くぞ、と心に誓う。
それと、もうひとつ誓った。
「スキーをやるんなら、逆に今なんじゃないか?そろそろ、封印を解いてスキーをはじめようか」と。
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