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喫茶店と蝶ネクタイ

11月4日(木)午前。

実習3日目。京都、自由行動の日。

この2日間、とにかく体力勝負の団体行動だった。3日目はいつも、自由行動の日としている。

足の痛みがとれず、午前中は喫茶店で過ごすことにする。

京都に行くと、必ず立ち寄る喫茶店がある。

三条通にある有名な喫茶店。

店の中に入ると、奥に円形の大きなカウンターがある。

そのカウンターの中で、2,3名の店員がひたすらコーヒーを入れている。

言ってみれば、厨房の周りに、客が座るカウンターが取り囲んでいるのである。360度を取り囲む客に見られながら、店員たちは黙々とコーヒーを入れている。

コーヒーを入れる店員は、いずれもおじさんだが、そのおじさんはみな、黒い蝶ネクタイに白衣のようなジャケット、といういでたちで、それがなかなかに格好良い。

私が蝶ネクタイに憧れるのも、以前からこの店員さんたちを見ていたからなんだな、ということに、あらためて気づく。

「喫茶店」というものに対する私のイメージも、この喫茶店が基準になって形作られているようだ。

円形のカウンターに座る客たちは、ひとくせもふたくせもあるようなおじさんたち。黙って新聞を読んだり、もの思いにふけったりしている。常連の客も多いようで、店員は、コーヒーといっしょに、その客の愛読する新聞をサッと差し出したりしている。

私はこの雰囲気が好きで、京都に来ると立ち寄るようになった。抵抗なく入れるようになったのは、私がおじさんになった証拠か。

平日の昼間にもかかわらず、円形のカウンターはほぼいっぱいである。平日の日中から500円のコーヒーを飲みにくるこの人たちは、いったいどういう人たちなんだろう、と想像をめぐらせるのも、また楽しい。

私はここで、山本周五郎の短編集『松風の門』(新潮文庫)を読みながら過ごす。

読んでいて、涙が出てきた。やはり山本周五郎はいいね。

なにしろ、「語り口」がすばらしい。そして、登場人物のだれもが魅力的である。

お昼近くなったので、喫茶店を出ることにした。

席を立って、レジに向かいながら思った。

平日の昼間に、山本周五郎の小説を読みながら涙を流している私だって、まわりから見たら十分に不思議な人間ではないか、と。

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