旅は続く、痛みも続く
11月1日(月)
昨日夜、勤務地に戻り、今日、仕事をして、荷造りもそこそこに、最終の飛行機で伊丹空港へ。そこから奈良に移動して、宿泊。明日から金曜日まで、学生たちを引率しての実習である。
左足の痛みが、ぶり返してきた。
左足が痛くなると、テンションがガタ落ちになる。
まず、愛想が悪くなるのである。今日、私に会った人たちは、ずいぶん愛想が悪い、と感じたに違いない。
それで思い出した。これもまた、映画「男はつらいよ」の話。
晩年、渥美清が病と闘いながら撮影に臨んでいた、という話は有名である。
体調がつねに思わしくなく、撮影が終わると、すぐさま横になるほどであったという。
地方でロケなんかしていると、たまたま見学をしていた一般人が、渥美清に「寅さ~ん!」と手をふる。
だが、渥美清はそれにまったく答えない。
ファン・サービスを全くしないのである。
それは、映画の中の「寅さん」のイメージとは、正反対である。
見かねた関敬六(コメディアンで、渥美清の浅草時代からの親友。映画「男はつらいよ」でも、「ポンシュウ」というテキ屋仲間の役で出演していた)が渥美に言う。
「おい、手ぐらいふってやれよ。天皇陛下だって手ぐらいふるぞ!」
それに対して渥美は力なく答えた。
「いいんだよ、俺はもう…」
もはや渥美は、ファンに向かって手をふる気力すら、なかったのである。
以上は、小林信彦『おかしな男 渥美清』(新潮社)で読んだエピソード。以前に読んだときの記憶をたよりに書いているので、正確かどうかは自信がない。
もちろん、私の左足の痛みは、渥美清ほど重篤ではないけれど、ここ3週間近く、この痛みとつきあっていると、渥美清のその時の気持ちがよくわかる。
それにしても、薬を飲んでもこれほど長く痛みがひかないのは、今までになかったな。足が痛みだしてからはお酒も飲んでいない。やはりストレスだろうか。
週末ごとに仕事を入れるのは、やはり私の能力をはるかに超えているのだ。しかも一昨日は北関東の某県、昨日は東関東の某県、と、それこそ旅回りの一座のように「公演」したのは、肉体的にも精神的にもツラかった。それが同じ演目ならまだしも、まったく異なる客層を相手に、まったく違う公演をしたのだから、その準備を含めると、相当なストレスだったのだろう。
元来、ガツガツ仕事をする人間ではないので、ムリをすると、必ずどこかにしわ寄せが来るのである。
だが、旅はまだ終わらない。明日の朝から、金曜日までの長い旅。
私にとっては毎年の旅だが、学生たちにとっては1度きりの旅である。
愛想だけはよくしよう。
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