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肩の荷がおりた日

先週の疲労のためか、頭と身体がまったく動かない。頭痛もひどい。授業と会議を最低限にこなすことしかできない。

11月8日(月)

「荷が重い原稿」が、ようやく本になった。

大手出版社の大型企画、というふれこみだが、「負のオーラ」をもっている私がかかわっている本である。本当に売れるのかどうかは、疑わしい。

私の業界には、「売れる本」を書く人と、「売れない本」を書く人がいる。私は当然、後者だ。

その私にとって、たぶん、こんな贅沢な企画に参加するのは、最初で最後だろうな、と思う。

どのくらい贅沢かというと、韓国に滞在していた昨年、編集者が「打ち合わせ」と称して韓国へ2度ほど訪れ、しかも「取材」と称してタクシーを借り切ってあちこち観光するくらい、である。

私がこれまで接してきた出版社や編集者では、まずこんなことは絶対にありえない。

かつて、編集者に一度も会うことなく、メールのやりとりだけで1冊の本を完成させたことがある。つまり、私はそもそもそのていどの扱いをされる人間なのだ。編集者がわざわざ訪ねてくることなど、本来はありえない。

その編集者に聞くと、「いま、○○先生の御本も担当しています」と、超有名な作家先生の名前をあげた。なるほど、有名な作家先生はふだんこういう接待を受けているのか、と、妙に感心した。

大型シリーズだけあって、カラー写真をふんだんに使ったり、表紙を有名な漫画家の先生が描いたりと、とにかく、編集部の力の入れようはハンパではない。私が「荷が重い原稿」と書いたのは、そうした分不相応の世界とかかわってしまったからである。

「荷が重い原稿」は、韓国滞在中、韓国での語学の勉強が一区切りついた今年の1月くらいから書き始めた。

C 予定のない日はほぼ毎日、大学に隣接する「カフェC」という喫茶店で、原稿を書き続けた

本ができあがったのも、あの喫茶店のおかげである。

「本ができたら、あの喫茶店に届けに行かないとね」と妻は言う。ま、行ったところで、先方は何のことやらサッパリ分からないだろうが。

だが、私にはやはり特別な思い入れのある喫茶店なのだ。

C_2なにしろ、8月にこの大学に再訪した際、なんとか時間を見つけて訪れたくらいだから。

ありがとう「カフェC」。今度またお礼にうかがいます。

さて、帰国後も、「荷が重い原稿」は続いた。エピソードを書くときりがないので、ここには書かない。

そしてこの日(8日)、発売日ということで、編集者がわざわざ東京からやってきた。

夜、びっくりするくらい高価なステーキをご馳走になる。

うーむ。やはり作家先生は、ふだんからこんな接待を受けているのだろうか。

「校正のプロの人が言ってたんですけどね」と編集者。

「先生の文章は相当読みやすい、書き慣れている人の文章だ、っていうんですよ」

「そうですか」

「ふだんから、文章をかなり書いておられるんでしょうか」

ドキッ!まさか、この2年間、本業の文章そっちのけで、カネにもならず、読者もいないブログを延々と書いてますから、とは言えない。

(そういえば、今日はブログを始めてからちょうど2周年だった)

「いえ…、その…、昔から書くことが好きでしたから…」とごまかす。

「またぜひいっしょにお仕事したいものです」と編集者。

(実は、韓国に留学していたときに書いていた日記を本にしたいんですが…)

という言葉が、のど元まで出かかって、呑み込んだ。さすがに、そんな厚かましいことは言えない。

そりゃそうだ。厚かましかったら、とっくに売れてるよ。

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