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町歩きの真骨頂

11月4日(木)午後

お昼を食べてから、さあ、どこに行こうか、と思案する。

このまま喫茶店をハシゴ、というのもつまらない。といって、人の多いところに行くのも、こりごりである。

そうだ、近江八幡に行こう、と思い立つ。以前から行ってみたかった場所である。

1 その理由のひとつは、この町が、ウィリアム・メリル・ヴォーリズ(1880ー1964)という米国人の建築家(のちに日本に帰化)が生涯をすごした町であり、そこには、ヴォーリズが設計した建築が数多く残っている、と聞いたからである。

ヴォーリズは、日本の近代建築を数多く手がけた建築家で、近江兄弟社の創設者の1人としてメンソレータムを日本に輸入した実業家としても知られている。

彼が手がけた建築は、韓国・ソウルの梨花女子大学にもおよんでいる。今年の3月に見に行き、とても印象に残った。

2 それに調べてみると、この人じたいがなかなか魅力的である。この人を軸に、日本の近現代史を描いたら、面白いんじゃなかろうか。

なんてことを考えつつ、近江八幡の町を歩くことにした。

近江八幡はまた、近江商人発祥の地でもある。いまも古い町並みが残っている。

Photo_2 つまり、ヴォーリズの建築がところどころに残り、江戸時代の面影を残す町並みも広がっているのである。

町歩きには、もってこいの場所なのだ。

近江八幡で、もう1カ所、行きたい場所があった。それは、「ボーダレス・アートミュージアム NO-MA」である。

Noma 昭和初期の町屋を改装した展示施設。「NO-MA」は、「MoMA (ニューヨーク近代美術館)」をもじったような名前だが、実はこの展示施設になっている建物が、もとは野間家の建物であったことに由来する。

美術館に入ると、真っ赤なベレー帽をかぶったご婦人が、受付の人となにやら話しこんでいた。美術館めぐりをするのが趣味の方らしい。やはり、美術館めぐりには、ベレー帽が必須アイテムなのか。

1階の展示を見たあと、2階にのぼって展示を見ることにする。だが、2階にのぼると、さすがに昭和初期の建物のためか、私が歩くたびに、ミシミシ、ミシミシ、と床が鳴るのである。しかも、私が体重をかけると床がペコッとへこみ、いまにも床が抜けそうである。

こわくなって、鑑賞もそこそこに建物を出た。

そんなこんなで、あっという間に夕方5時。この町を半日、十分に楽しんだ。

これぞ、町歩きの真骨頂である。

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