復調のきざし
11月30日(火)
この2カ月ほど心がなんとなくどんよりしていたが、少しずつ持ち直しつつあるようだ。
研究室に、学生をはじめ、いろいろな人が来て、いろいろな話を聞いたり話したりするおかげであろうか。
先週の授業のあと、研究室の扉のところで、3年生の2人と話しこんでいると、4年生のSさんが、
「世代交代ですね」
と言いながら、研究室に入ってきた。
そういうSさんは、今年の4月、5月、6月と、頻繁に研究室にやってきては、就活の状況を報告した。就活は、想像以上に精神的に辛い部分があり、話すことで、いくらか気が晴れたのだろう。
Sさんだけではない。ほかの4年生も、逐一報告に来ていた。
これからは、いまの3年生が、そうなっていくのだろう。Sさんの言った「世代交代」とは、そういう意味である。
といっても、私は、もっぱら聞き役で、たいしたアドバイスができるわけでもない。だが、もっともらしいことを学生に向かって言っているうちに、なんだか自分も励まされているようになるから不思議である。
毎度毎度、芸人のたとえを引き合いに出して恐縮だが…。
むかし、上岡龍太郎が、ダウンタウンの松本に、「弟子はとった方がええ」とアドバイスしていたのを思い出した。
「自分の芸を弟子に継がせようとか、そういう意味で言っているのではない」という。
「弟子に言った言葉は、全部自分にはね返ってくる。だから、弟子に語りかけることが、実は自分に語りかけることになるのだ」
たしか、そんなことを言っていたと思う。
なるほど、それで私は、学生と話していて、励まされているのかも知れない。
先週末(27日、28日)、勤務地から新幹線を乗り継いで7時間かかる場所まで、共同研究のメンバーで調査に行ったときのことである。
日曜日の夕方、調査が終わり、バスと鉄道を乗り継いで、京都駅にむかう。そこから私は、新幹線を乗り継いで勤務地まで帰ることになっていた。
新幹線の指定席をとっていたのだが、わが師匠が「東京駅まで一緒に帰ろう」とおっしゃったので、自由席に変更してご一緒することになった。調査がうまくいったので、ビールと駅弁を買い込んで、2人でささやかな打ち上げである。
考えてみれば、もう10年以上、師匠と調査に行くと、そんなふうに道中でいろいろな話をする。いや、正確にいえば、私はもっぱら聞き役で、ほとんどは、師匠がお話になるのを「はあ」「そうですね」と、あいづちをうつだけなのであるが。
不思議でならないのは、座持ちが悪く、気の利いた返しもできないような愚鈍な私を見はなすことなく、10年以上もそうやって私にいろいろとお話しになる、ということである。
ひょっとして師匠は、私に向かって話すことで、ご自身に言い聞かせているのではないだろうか。
自分自身の立ち位置を確認するために。
そんな気がしてきた。
若い頃には、気がつかなかったことである。
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