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のろわれたテーマ?

12月23日(木)

4年生たちはいま、卒論がいよいよ大詰めである。

クリスマスイブの前日の今日、しかも祝日であるにもかかわらず、大学に来てパソコンと格闘している。

数日前の夕方だったか、4年生のNさんが研究室にやってきた。

「卒論に必要な雑誌論文を探しているんですけど、見つからないんです」という。

聞くと、有名な雑誌に乗っている論文である。

「その雑誌なら、大学図書館にあるでしょう」

「たしかに雑誌のバックナンバーはあるんですが、わたしが欲しい論文の号だけが、なぜかないんです」

「たしか、前にも同じようなことがあったよね」

「ええ」

Nさんは以前にも、今回の論文とは別の雑誌論文を探しているとかで、私の研究室にやってきた。その論文が載っている雑誌を探してみると、たしかにその雑誌は大学にバックナンバーがあるのだが、やはりその時も、その論文が載っている号だけなかったのである。

「不思議なこともあるもんだ」と私。

「いったい、どういうことなんでしょう?」Nさんがいぶかしむ。

自分がほしい論文が載っている雑誌の号だけがたてつづけに見つからないことに、Nさんは不審の念を抱いたようだった。

「これは何かの陰謀でしょうか?」とNさん。その仰天の発想に、私は笑いそうになるのをこらえた。

「たしかに、Nさんが論文を借りだそうとするたびに、事前に何者かによってその論文の載っている雑誌が消されているようだね」私は、Nさんの「陰謀説」に話を合わせることにした。

「どうしてですか?私の取り組んでいるテーマに問題があるんでしょうか?」

「うーむ。その可能性はあるな。国家の暗部に触れるテーマだからね」

実際、そんなテーマでは全然ないのだが、私が大げさに言うと、Nさんは、

「ひえー!やめてくださいよ!怖すぎます」

と、すっかりビビってしまった。

ちょっとおどかしすぎたかな、と反省。しかし、こんな子供だましのウソで怖がるNさんもNさんである。

ところで、Nさんの心配は杞憂に終わった。

その翌日、大学の近くにある県立図書館で、探していた論文の載った雑誌が、いとも簡単に手に入ったからである。

だから、決して「のろわれたテーマ」なんかではなかったのだ。

そんな陰謀説のことを忘れたかのように、今日もNさんは休日を返上して、学生研究室で卒論と格闘していたのであった。

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