本人歌唱
ベスト盤で思い出した。
韓国滞在中、K-POPの知識を手っ取り早くとりいれようとして、いろいろな歌手のヒット曲が1枚のCDに入っている、という安物のベスト盤を、よく買った。
ベスト盤、というとややこしいから、「寄せ集め盤」と呼ぶことにしよう。
するとまた妻に呆れられた。自分の好きな歌手のCDを買うのならともかく、どうして雑多な歌を寄せ集めたようなCDを買うのかがわからない、と。
バカにされながらも、せっせと買い集めた。
そういうCDは、おもに、Eマートやホームプラスと行った、日本でいうところのジャスコにあたるような、郊外型の大型店で売っているのである。
ところがしばらくしてから、あることに気がついた。
入っている曲じたいはどれも有名なものばかりなのだが、歌っている歌手が、本人ではないようなのである!
それがわかったのは、妻が持っている、ある歌手のCDに入っている曲と、私が買った「寄せ集め盤」に入っている同じ曲を聞きくらべたときである。
いままで本人が歌っているとばかり思い込んでいたが、全然違う歌手ではないか!私はかなりショックを受けた。
そういえば、子どものころに同じようなことがあったな。
30年以上も前の話。まだCDなんてなかったころ、お祭りの縁日で、よく歌謡曲のカセットテープが売られていた。
あるとき、父が「藤圭子歌謡全集」というカセットテープを縁日で買ってきた。
藤圭子などといっても、いまの若者にはわからないだろうな。宇多田ヒカルのお母さんである。
ところが、そのカセットを聴いて驚いた。
藤圭子でも何でもない、低い声のオッサンが歌っているではないか!
いわゆる、「パチもん」といわれるテープである。そういえばむかしのテープには、そういうパチもんと区別する意味で、正真正銘、本人が歌っているテープには「本人歌唱」などと書いてあった。いまでも稀に、CDのラベルにわざわざ「本人歌唱」と書いてあるものがある。
つまり、昔はそれだけパチもんのテープがよく売られていたのだ。父は、「安いから」という理由で、懲りずにそんなテープをよく買ってきていた。
そして私も、あのころの父と同じように、韓国でパチもんのCDをせっせと買っていたのだ!血は争えないとはこのことだ。
それを知った妻は、さらに呆れた。「K-POPの知識を手っ取り早く手に入れようなんてさもしいことを考えるから、そんなことになるのよ」
これには一言もない。
しかし、パチもんのCDを聞いていて不思議に思うことがある。
どれも、メチャクチャ歌が上手いのだ!
イ・スンチョルの「ソリチョ」を歌っているパチもんの歌手なんて、イ・スンチョルなみに歌が上手いもんね。
いったいこれはどういうことだろう?
そんなに歌が上手いんなら、パチもんの歌手になんかにならずに、オリジナルの曲を出せばよいのに。
パチもんの歌謡曲業界。意外と奥が深い世界かも知れない。
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