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本日も来客あり

2月15日(火)

午前中に2時間半近くの会議。午後には1時間半近くの会議、のようなもの。

研究室に戻ると、扉をたたく音がした。3年生のMさんである。

「卒論の相談に来ました」

あ!そうか。3年生は今月末までに卒論の仮題目を提出しなければならなかったんだった!

つい先日、4年生の卒論が終わったかと思ったら、もう3年生の卒論準備か…。

これはもう、完全に「卒論の呪い」だな。「卒論の呪い」が私にとりついているとしか思えない。

とりあえず来週、3年生に集まってもらって「卒論出陣式」を行うことになった。

Mさんがいる間にも、電話やら来客やらの対応に追われる。

Mさんが帰ったあと、しばらくしてから再びドアをたたく音が。今度は同じ3年生のTさんである。

「いま、大丈夫でしょうか」Tさんがおそるおそるドアを開けた。

「大丈夫ですよ。どうして?」

「いま、誰かとお話になってたみたいですから」

「ええぇぇ!誰もいないよ」

「たしかに誰かと話している声が聞こえたんですけど…」

どういうことだ?私が無意識のうちにひとりごとを話していた、ということなのか?

だとしたら、オソロシイ。私も末期症状である。

「とにかく誰とも話してないよ。で、今日はどうしたの?」

すわ、またお笑いサークルがらみの依頼か?と思いきや、

「じつは就職活動の相談で…」という。エントリーシートを書いて後で持ってくるので、添削してほしいのだという。

終わると今度は、近くの同僚が「パソコンの調子がおかしいのでちょっとみてほしい」と。

それが終わると今度は、

「どーもー。○○印刷でーす。遅くなってすいませーん」と、業者。仕事の打ち合わせ。

気がつくともう6時近くである。そういえば依頼者K氏も来るはずだったな。すると依頼者K氏から「さきほどうかがったのですが、来客中のようだったので帰りました」というメールが来ていた。

「例の事件ですけど、今日、『落とした人物』に会ったら、昨日会った『拾った人物』と、顔がそっくりだったんです!これはいったい、どういうことなのでしょう???」

まさか、共謀どころか、同一人物だったってことか???

だとすると、今度はカードの件の説明がつかない。

うーむ。事件はますます混迷を深めてきたな。

頭が痛くなってきた。

外に夕食に出ようと、建物の玄関を出ると、私を呼ぶ声がした。院生のSさんである。

見ると、私の授業を受けていた、3年生のSさんも一緒である。

「私の妹です」と院生のSさん。

「え!?2人は姉妹だったの」全然知らなかった。そう言われれば、同じ苗字である。

「はい。…で、先生にお詫びしなければならないことがあるんです」

「何でしょう」

「昨日さし上げたチョコレートのことなんですが」

昨日はバレンタインデーとやらで、院生のSさんと、3年生のSさんが、それぞれ別々にチョコレートを持ってきてくれた。…とすると、姉妹で持ってきてくれた、ということか。

「あれ、間違いでした」

「え?間違い?もう食べちゃったよ」

「いえ、そういうことじゃないんです」

「どういうこと?」

「私たち、ついうっかり、同じチョコレートをさし上げてしまったんです」

そういえば、院生のSさんと3年生のSさんが持ってきたチョコレートが、まったく同じものだったことを思い出した。

ま、こっちはそんなこと気にしていなかったんだが、姉妹でチョコレートの銘柄がカブってしまったことを気にしていたらしい。「違うチョコレートをさし上げるべきでした」とS姉妹。

「でも、美味しかったですよ」

「すいません。実は先ほど図書館でお目にかかったときに、お詫びしようと思ったんですけど、どのように言っていいかわからなくて」

たしかにそうだ。「チョコレートがカブってしまって申し訳ありませんでした」と言われても、「はぁ?」となってしまうだろうな。

「そんなことより、あなたがた二人が姉妹だった、ということのほうがビックリしました」

「そうですか。では失礼します」

夕食が終わり、研究室に戻る。しばらくすると、さきほどのTさんがエントリーシートを持って研究室にやってきた。

見ると、顔面蒼白である。

「どうしたの?」

「ビックリしました。階段を上がって先生の研究室に行こうと思ったら、いくら探しても先生の研究室が見つからないんです!」

「え?どういうこと?」

「廊下を何回も往復して、ずっと探したんですが、先生の研究室がなかったんです」

よくわからない。

「そしたら、間違えて4階ではなく3階をウロウロしてました」

「なあんだ。階をまちがえていたわけね」

「でも、廊下は真っ暗だったし、誰もいないし、ビックリしたんですよ。私、頭がどうかしちゃったんじゃないかと思って…」

さすがお笑いサークルの会長。やはり独特の感性を持っている。

かくして本日も、夜は更けてゆく。

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