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キョスニムの韓国語

2月21日(月)

昨年4月からうちの職場に留学していた韓国人の大学4年生、M君が、1年間の留学期間を終えて、水曜日、韓国に帰国することになった。

私は彼の指導教員をつとめていたので、6時半から送別会を開くことにした。

M君と、彼のチューターをつとめた3年生のTさんと、私の、3人によるささやかな送別会である。

最後は、この地の郷土料理や地酒を味わってもらおうと思い、駅前の郷土料理の店に入る。サラリーマンのおっさんばかりが集まるような店である。

些細なことだが、この1年間、私はひとつ決めていたことがあった。それは、「M君とは韓国語で会話をしない」ということである。その理由については、以前に書いたことがある

何より、M君は居酒屋で私の与太話を聞きとることができるくらい、日本語の能力が卓越しているのである。いろいろ話していると、本当に彼は好青年だなあ、と思う。

チューターをつとめたTさんも、まじめで前向きな人である。そのTさんが言った。

「昨年の6月、韓国の友人の結婚式に招かれて、大邱に行ったんです」

「へえ、大邱のどこで結婚式だったの?」と私。

「ジェイズホテルです」

「ジェイズホテル!トンテグ駅の近くの?」

「そうです。ご存じですか?」

「ご存じも何も…、私が留学した初日に泊まったホテルが、ジェイズホテルだったんだよ!」

私にとっては思い出深いホテルである。留学初日、こともあろうに学会発表をさせられ、しかも大学の寄宿舎が満室ということで、その日はジェイズホテルに泊まったのである。さんざんな1日だった。

それにしても、大邱の数あるホテルの中から、ジェイズホテルの名前が出てくるとは…。

「世の中ってのは、狭いもんだなあ」

私が感慨にひたっていると、M君が口をはさんだ。

「なんか、ヘンな感じです」

「どうして?」

「だって、韓国人のワタシが全然行ったことがないところの話を、お二人がしているんですから」

なるほど、韓国人をさしおいて、韓国の一地方都市の細かい地理の話を、日本人二人がしているのは、なんか可笑しい。

そのTさんは、ゆくゆくは米国に留学したいのだという。まじめで前向きなTさんなら、きっとうまくいくだろう。

「すいません。お冷やください」Tさんが店の主人に言った。

「オヒヤって何です?」M君が聞いた。

「お水のことだよ」

「お水のことですか!?はじめて知りました。てっきり、冷やすものだから、扇風機かなにかだと思いました」

そうか、「お冷や」なんて言葉は、日本語の授業で習わないんだな。

「滞在中、最後に覚えた日本語だな」と私。

「そうですね」M君は笑った。

いろいろな話をしているうち、気がつくと、9時半近くになっていた。「そろそろ出ましょう」

会計をすませ、店を出る。

最後に私は、M君に言った。

「イベ マジャッソヨ?(口に合いましたか?)」

一瞬おどろいたような顔をしたM君は、答えた。

「マシッソッソヨ(美味しかったです)」

私が彼に話しかけた、最初で最後の韓国語である。

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