この時期のミステリー
2月14日(月)
自称「探偵事務所」(研究室)にて。
「こんなことって、考えられます?」と依頼者のK氏。
「考えられませんなあ」と私。
「私に落ち度があったんでしょうか。…でも、ちゃんと確認したんですよ」
「落ち度はなかったと思いますよ」
「じゃあ、いったいどういうことなんでしょう」
「ちょっと拝見」
私は証拠となるブツを受け取り、ふだん資料調査などで使っている虫眼鏡を取り出して、子細に観察した。
「1週間も落ちていたというわりには、ほとんど汚れていませんねえ」
「でしょう」
「それと、この折り目は?」
「拾った人物が持ってくるときにカバンに入れるために折り曲げた、っていうんです」
「それにしては折り目が深いな…。きっちりと折ってある。折ってからだいぶ時間が経っているようにも思えます。それに、折った後に細工をした可能性もある」
私は虫眼鏡で観察しながらつぶやいた。
「だいたい、落としてから拾われるまで、時間が経ちすぎてますね」
「そうですね。1週間以上経っているはずです。…ちょっと不自然な感じがしますよね」
「ひょっとするとですよ…」と私の推理。
「落とした人物と拾った人物が共謀している可能性があります。そう考えれば、すべてのつじつまが合う」
「ま、まさか…では、カードの件は?」
「それも細工をしたと考えられるでしょう」。
「まさか、そこまで…」
「だとすればですよ、その時、その人物はその場にいなかったことになる。これは周到に計画された犯行です!」
「そ、そうなりますね」
「巧妙というほかない。こんな手口は私もみたことがありません」
「私もです」とK氏。「でも、落とした人物も、拾った人物も、そんな悪い人物には思えないんですよ。何でわざわざこんな手の込んだことをしたんでしょう?」
「たしかに…」私の推理はいきづまってしまった。
この時期最大のミステリーは、はたして解決するのか?
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