卒業式!
3月25日(金)
「なごり雪」とは、伊勢正三が生み出した言葉だろうか?
だとすれば、伊勢正三に感謝しなければならない。
雪国の人間からすれば、雪は必ずしも歓迎されるべきものではない。彼が九州出身だったからこそ、生み出された言葉かも知れない。
今朝は、雪が降り、すぐにとけた。「落ちてはとける雪」は、「なごり雪」と呼ぶにふさわしい。
本来ならば、卒業式が行われる日である。だが地震の影響で、卒業式は中止になった。その代わりに、大学の中で、学位記が事務的に配布されることになった。
事情はどうであれ、今日は記念すべき卒業の日である。私は久しぶりにネクタイを締めて、職場に向かう。
午前中、実直なA君が研究室にやってきたので、一緒に写真を撮る。彼は4月から故郷の長野県の職員として働くことになっている。「こういう機会なので」と、彼も背広を着てきた。
午後、4年生数名が研究室をおとずれる。Sさん(リーダー)、Kさん、Nさん(天然)、A君(元局長)、Wさん、Sさんといった人たち。
このうち、NさんやWさんは袴を着ていた。
先日、Sさん(リーダー)から来たメールに、「何より袴を着ることができないのが残念です。祖父母も私の袴姿を見ることができないのを残念に思っているようでした」とあった。たぶんこれは、ほとんどの女子学生たちの思いだろう。この思いがおそらくは、Sさんが1年後の卒業祝賀会をめざすきっかけとなったのである。
この4月から故郷の町の職員としてはたらくKさん。Kさんの故郷の町は、地震や津波、原発事故の被害を直接的に受け、いまは役場の機能そのものが、他の自治体に移っている。はたしてKさんが4月から職員として働けるのか、心配だった。
「やっと役場から電話が来ました」とKさん。「4月からさっそく働いてもらうので、作業着で来てくれと。それと、当分は家に帰れない可能性もあるので、着替えをたくさん持ってくるようにとも言われました」
さっそく最前線ではたらくのか。故郷を愛し、故郷に愛されたKさんのことだから、きっと大きな戦力となるだろう。
「なんか、卒業したっていう感じがしません。これから社会に出るという実感がわかないんです」とA君(元局長)。これはみんなの思いだろう。
3月11日の前と後とでは、何もかも変わってしまった。これから少しずつでも、失われた時間を取りもどさなければならない。「1年後の卒業祝賀会」の実現は、そのきっかけにもなるだろう。
「みんなで写真を撮ろう」私が提案する。
研究室では狭いので、廊下で写真を撮っていると、同僚が通りかかった。
「せっかくなんだから、こんなところで撮らずに、教室かどこかで撮りなさいよ」
そういわれればそうだ。なにもこんなうす暗い廊下で撮る必要などない。ということで、演習でよく使った教室に移動する。
黒板に、SさんとNさんがチョークで大きな字を書いた。
「2011.3.25 卒業式」
その黒板の前で、記念撮影をした。
ささやかだが、これが今年度の、私たちの卒業式である。
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コメント
後輩(と、呼んでいいのかな?)のみなさん、ご卒業おめでとうございます!
大変な時期の卒業で、これからもしばらく大変かとは思いますが、良いメンバーだなあとブログを拝見していて思いました。1年後の祝賀会が無事に開催できるように祈っております!
投稿: S木 | 2011年3月26日 (土) 22時31分