見たこともない季節
3月26日(土)
どうでもいいことだが、実は私、武田鉄矢があまり好きではない。
ドラマ「白夜行」の刑事役は、どう考えてもミスキャストである。
ま、それはともかく、でも唯一すごいなあ、と思うのが、海援隊の「肩より低く頭(こうべ)をたれて」という歌である。
小学生の時に見た映画「ガラスのうさぎ」のエンディングで使われていた歌である。たぶん、「ガラスのうさぎ」という映画は、私と同年代ならば、みんな見ているはずである。そして男の子だったら、主役をつとめた蝦名由紀子に、恋をしたはずである(いまは芸能界を引退している)。
『ガラスのうさぎ』は、1945年3月10日の東京大空襲で家族をなくした少女が、さまざまな困難を経ながらたくましく生きていくという、高木敏子のノンフィクションである。いま調べてみたら、1977年に刊行され、第24回青少年読書感想文コンクールの課題図書となっているから、この当時の小学生は、たぶんみんなこの本を読んだのだと思う。1979年に映画化されているから、私は小学校5年生の時に映画を見ていることになる。
主役をつとめた蝦名由紀子は、私よりも少し上の年齢だが、小学校5年生の私にとっては、ほとんど初恋の人だったといってよい(しつこいな)。
この映画は、戦争ですべてを失った少女が、終戦後、少しずつ希望を見いだし、前を向いて歩いてゆくところで、エンディングをむかえる。その時に流れる歌が、海援隊の「肩より低く頭(こうべ)をたれて」という歌なのである。
この歌はほとんど無名だが、「贈る言葉」とか「人として」とか「思えば遠くへ来たもんだ」などよりも、はるかに名曲だ、と、個人的には思う。なにより歌詞がすばらしい。
いまこそ武田鉄矢は、この歌を歌うべきなのではないのか?「贈る言葉」ではなく。
いや、今が「その時」でないのだとしても、いずれ歌わなければならない歌だと思う。
「焼けた大地に 砕けたガラス
涙のように 輝いた
私はここから 歩きだす
声あるならば 大地を語れ
見たこともない 季節のことを
声あるならば 大地を語れ」
いま私たちは、「見たこともない季節」の中にいる。そして、声ある者は、「見たこともない季節」のことを、語り継いでいかなければならない、と思う。
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コメント
春が来ては 花の名を知り
夏には雲の名を覚えていた
秋が吐息を白くして
また過ぎたら…
見たこともない
季節があった
冬より冷たい
季節があった
炎の霙が降りしきる
赤い疾風が吹き荒れる
人は心を言葉にしない
肩より低く頭をたれて
肩より低く頭をたれて
肩より低く頭をたれて
冬が過ぎれば夏が来ていた
人影だけを黒く映して
陽射しを遮る緑がなくて
緑がなくて
私の周りに
誰も居ない
見たこともない
季節が過ぎた
獣のように人が走る
叫ばなければ聞こえない
焼けた大地に砕けたガラス
涙のように輝いた
私はここから歩き出す
声あるならば大地よ語れ
見たこともない季節のことを
声あるならば大地よ語れ
ですね。
歌詞はうろ覚えですので正確かは判りませんが 凄い歌です。
投稿: とおりすがり | 2011年5月 6日 (金) 07時54分
たしかに凄い歌です。私が小学生の時にこの歌を聴いて衝撃を受けましたから。
投稿: onigawaragonzou | 2011年5月 8日 (日) 20時55分
確かに、今改めて歌詞を見てみますと、“3.11”を歌ったような歌詞にも思えますね。
投稿: 名無しの戦犯者 | 2019年7月24日 (水) 22時02分