漫才台本
3月19日(土)
コ「ただいまご紹介にあずかりました、K高校器楽部OBのコバヤシと申します」
私「同じくMと申します。私たちは、高校時代、器楽部吹奏楽団に所属していて、オオキ君とフジイさんの1学年上の先輩にあたります。本日は、まことにおめでとうございます」
コ「高校時代の二人をよく知る者として、実は私にスピーチの依頼があったわけですけれども、実は、私は高校時代のことをほとんど覚えておりませんで、それで、同期の中でも、一番長い時間をともにしたM君と二人で、スピーチをすることになったわけです」
私「よろしくお願いします」
コ「早速ですがM君、お二人は、高校時代どういう人だったでしょうか」
私「とても目立つお二人だった、と思います」
コ「ほう、目立つお二人。お二人ともですか。これはまた、どういうことでしょうか?」
私「まずフジイさんについて、今でも覚えていることがあるんですが、私たちが高2の、夏の合宿のときのことです。お二人がまだ高1だったときです」
コ「たしか長野県の車山高原というところでしたね」
私「そうです。その近くに白樺湖、という湖があるんですが、ちょうどそのとき、「オーストラリアフェスティバル」とかいうイベントが行われていて、そこで、私たちの楽団に出演依頼が来たのです」
コ「そんなことありましたっけ?」
私「ええ。私たちの楽団は急遽飛び入り参加して、1曲か2曲、野外のステージで演奏しました」
コ「あー、なんとなく思い出してきました」
私「お客さんがけっこう来ていたんですが、演奏が終わったあと、その観客が、なぜか、フジイさんのまわりに集まってきたんです」
コ「ほう、それはまたなぜです?」
私「可愛かったからです」
コ「可愛かったから?」
私「ええ。観客たちは、一番前の席にフルートを吹いているとても可愛い子がいる、ということに気づいて、まわりにビックリするくらい人が集まってきたんです。そしたらそのとき、フジイさんは、あんまりびっくりして、泣いてしまったんです」
コ「なるほど。そういうことがあったんですか。つまりそれだけ、目立つ存在だった、ということですね」
私「そういうことです」
コ「じゃあ、オオキ君の方はどうですか?彼はどっちかというと、地味な印象だったと思うんですが…」
私「いや、目立ってましたよ」
コ「そうでしたっけ?」
私「あれは、私たちが高2の時の文化祭です。お二人が高1の時です」
コ「そのときに、なにかありましたっけ?」
私「ジェイガーの『第二組曲』という曲を演奏中に、その事件が起こりました」
コ「事件?」
私「曲の最後に、一拍沈黙があって、『ジャン!』と終わる、というものだったんですけど、つまり、最後、みんなで『ジャン!』と音を出す直前の1拍は、誰も、何も音を出してはいけない、という曲だったんです」
コ「たしかそうでした」
私「で、全員が休まなければならないその1拍のところで、当時テナーサックスを吹いていたオオキ君は、「プ」と、1拍早く出てしまったんです」
コ「つまり、『…(一泊沈黙)ジャン!』ではなく、『プ!』『ジャン!』となったわけですね。思い出しました」
私「ひとりだけ、絶対に音を出してはいけないところで、出してしまった。…だから、彼は目立つ存在だった、というわけです」
コ「それは『目立つ』の意味が違うでしょう!もっとほめるべきところはないんですか?」
私「じゃあ今度は、あなたがオオキ君のいいところを言ってくださいよ。あなたも同じテナーサックスだったじゃないですか」
コ「そうですねえ…。オオキ君は、…リズム感が悪かったですね」
私「それじゃあ、さっきの話と同じじゃないですか!」
コ「でもそれが一番の印象です。吹奏楽をやりたい、と言っていたわりには、全然リズム感がなくて、最初は、テナーサックスを持たせずに、ドラムスティックを持たせてリズムの練習ばかりさせていました」
私「そうでした。音楽的センス、という点では、フジイさんと対照的ですね」
コ「そうです。いま思うと、オオキ君はどうして、吹奏楽なんかをやろうと思ったんでしょう?」
私「それは、…フジイさんと出会うためじゃないでしょうか」
コ「なるほど、うまいこといいますね。でも結局、オオキ君のいいところをまだ何も言っていませんね」
私「あります、あります。思い出しました!」
コ「なんですか?」
私「オオキ君は私たち二人と違って理系なんです。だから、たぶん機械とかに強い」
コ「それがいいところですか?」
私「ええ。反対に、フジイさんは機械関係がまるでダメだ、と聞きました」
コ「ほう、たとえば」
私「今でこそ、携帯電話とかパソコンとかを使っておられますけど、ついちょっと前までは、メールの使い方が全然わかんなかったんだそうです。フジイさんと連絡をとろうと思ったら、いちいち自宅にFAXを送らなければならなかったんです」
コ「それ、本当ですか?このご時世に信じられませんねえ」
私「本当ですよ。その前は伝書鳩だったんですから」
コ「そりゃないでしょう」
私「もっと前は、糸電話でした」
コ「いい加減にしなさい!」
私「でもこれからは、オオキ君がいるからもう安心です。わからないことがあれば、すべて彼が解決してくれるんですから」
コ「そう考えると、本当に対照的なお二人ですね。じゃあ最後に一言ずつお祝いの言葉を申し上げましょう」
私「夫婦というのは、同じ価値観を持つことだけでなく、違う感性を認め合うことも大事なことだと思います。私には対照的なお二人のように見えますが、それだけに、これからお二人がお互いによい影響を与えながら歩まれていくことと思います。また、そのことを私たちも期待しております。…では、コバヤシ君」
コ「右に同じです」
私「何も考えてないじゃないですか!」
コ・私「本日は、まことにおめでとうございます。ありがとうございました」
…オオキ君、フジイさん、これが、披露宴当日に私たちがやるはずだった「漫才スピーチ」の台本です。1週間遅れですが、ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに。
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コメント
ここまで緻密な台本ができていたんですね。読んでいて先輩方の姿が目に浮かんできました。生で見ることができたらよかったのですが・・・
まだ余震が続いており、寒さもまだまだ厳しいと思いますが、くれぐれもお体にお気をつけください。私も節電など、ここでできることを頑張って続けていこうと思います。
投稿: ゴン | 2011年3月19日 (土) 20時48分