この素晴らしき世界(いい明日が来るように)
震災から10日後のラジオの深夜放送のエンディングで、私と同年代のラジオDJが語りはじめた話。文字に起こしてみたところで、独特の語り口は再現できないが、私には、若い頃にラジオを聞いて気持ちが救われたラジオDJの、ラジオへの恩返しのようにも聞こえたので、あくまで私の心覚えのため、記録にとどめておく。
「若手の芸人に聞いた話なんだけど。
アニマル浜口さんが「気合いだ!気合いだ!」っていうのと「わっはっはっは、わっはっはっは」ってやるじゃん。あれを見るたびに、そいつが、「わっはっは星人を思い出す」って言うんだよね。…こんなこと(東日本大震災)がある前ね。「わっはっは星人」ていうのがいて…。
それがまたいい話でさ、いい話っていうか、不思議、だけどいい話でさ。
そいつが阪神大震災の時に、家にひびが入ったんで、避難するところに避難してて。その時まだ子供だったそうなんだけど。
その時に、「わっはっは星人」っていうおっさんが来て、まー、基本、役に立たないおじさんらしいんだよ(笑)。大人がいろんな世話をしているところに来て「わっはっは星人だ」っておじさんは言うんだって。
で、おじさんに触ったら「わっはっは」って言わなきゃダメだっていうルールを勝手に作って、鬼ごっこみたいなことしてくるんだって。それで捕まえて、で、捕まると、もうしょうがないからおじさんとかみんなが「わっはっは、わっはっは」って言ってるだけなんだって。
それで、その「わっはっはおじさん」が、ある日突然、「全員をわっはっはにしたらおじさんは次の星に行く」みたいなこと言うんだって。
そしたら、そいつはもう、ガキの中ではちょっと大人だったし、足も速かったから、わっはっは星人に捕まらなかったんだけど、みんなが捕まって「わっはっは」やってるのに自分だけやれないのが、ちょっと寂しくなってきて、夜、わっはっはおじさんのところにバッタリ会ったふりして捕まっちゃったら「わっはっは仲間」になれるかな、と思って行ってみたら、
おじさん泣いてたんだって。ひとりで。
もうそれがなんか、すごいいい話でさ。
で、……オレはたぶん、「わっはっは星人」になりたい。なりたいな、ってちょっと思ったりとか。
あと、いま、そういうところにいてさ、あんまりやることなかったらさ、そういう役目も、あるんじゃないか、 てちょっと思ったりするね。
あと、「頑張れ」っていうのが普通か知んないけど、ガンバってるよ、たぶん。
たぶん、みんなガンバってるっていうか、もう、そこで、ただ息をしていることでも、もうガンバってるっていう意識を持ったほうがいい。
みんながこれ以上「頑張れ」って言ったところで頑張りようなんて誰もわからないのに、つい、僕らはリズムで「頑張れ」って言っちゃいがちなんだよね。失礼のない言葉だと思って。
で、その気持もわかってほしいんだ。その短い言葉で「自分たちはあなたたちの味方です」って言うために、「頑張って」っていうのでしめちゃうけど、自分たちはたぶんガンバっていると思うので…、
とりあえず、今日をやり過ごしてみませんか。
いろいろ失礼ありましたけれども、
本当に……
いい明日が来るように」
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