おっさんたちのメール同窓会
高校の部活の同期のSから、「久しぶりにみんなで集まらないか」というメールが来たのは、3月3日のことである。
Sというのは、高校時代、あの「ミヤモトさんサミット」の議長をつとめていた男である。
人間、いくつになっても役割というのは変わらないものだなあ。
3年くらい前にいちど、Sを含む同期の数名と、東京で飲んだことがあるから、それ以来である。
「今度は同期の女子にも声をかけてみたいと思う」という。このあたりも、相変わらずである。
3月26日(土)に東京に集合、と号令がかけられたが、あいにくその日は出張の予定が入っていて、参加できない。
さっそく、参加、不参加のメールが、同期のおっさん連中の間で交わされる。
平日の昼間に、みんな暇なんだなあ、と思いつつ、次から次へとやってくるメールを眺めていた。
その中で一人、じつに20年ぶりに連絡をかわした友人がいる。部長をつとめていたTである。
彼は大学卒業後、S市にあるローカル局のアナウンサーになった。いまではその局の看板アナウンサーである。
その仕事柄、なかなか東京で飲み会に参加する、などということはできない。ところが3月26日は東京に出張なので、彼の日程に合わせて、同期会をやろう、ということになったのである。
その日の晩、私のところにTからメールが来た。26日は会えなくて残念だが、せっかく隣県に住んでいるんだから、こんど酒でも飲もう、という内容である。そしてお互いの仕事のことや家族のことを、メールで近況報告しあい、近いうちの再会を約束した。
ところが、このあと事態が一変する。3月11日の震災である。
甚大な被害を受けたS市、そのS市のローカル局でアナウンサーをしているTは、ほとんどテレビに出ずっぱりで、被害の状況を伝えた。その様子は全国ネットのニュースにも流れた。私はこのとき、じつに20年ぶりに彼の姿を見た。震災がきっかけで、彼の元気な姿に再会する、というのは、何とも複雑な思いである。
当然、3月26日の同期会も中止になった。
さて、それから1カ月が過ぎた、4月25日(月)のこと。
Sから同期のメンバーにメールが来た。「5月の連休あたりに集まろうぜ」というメールである。「どうやら5月4日に同期の女子が集まるという情報を入手したので、それに乱入しようかと思います。みなさんはどうですか?」
本当に変わらないやつだなあ。あくまでも女子との飲み会にこだわっているようだ。
「実は妻が出産する予定で、予定日が5月5日なんだ。なので東京には行けない」と、広島に住むO。
「福島に住んでいる母が、いまこっちに避難していて、当分東京に行けそうにない」と、福岡に住むK。
次から次へと同期のおっさんどもからメールがくる。平日の昼間だぞ。みんな、本当に暇なんだなあ。
私も返事を書いた。
「連休は東京にいるにはいるが、5月3日は高校のOB楽団の定期演奏会で司会をやることになっていて、そちらで手一杯です。いっそのこと、演奏会に聞きに来てよ。同期のFやKさんも出演するんだし、その方が手っとり早い」
「なるほど。じゃあ、俺も一緒に夜の打ちあげに参加すればいいのかな」とSからの返事。
「いや、打ち上げは知らない連中ばかりだろうから、それとは別に、演奏会のあとに飲みに行く時間を作ろう」と私の返事。
「そうだね。そうしよう。じゃあ、3日、演奏会に行ける人いますかー?」ふたたびSがみんなに呼びかけた。
かくして、事態はどんどん進展していく。…というか、Sはそうとう暇なのか?身軽にもほどがある。
夜になって、同期の中でいちばんまじめだった、東京在住のWからメールが来た。
「話がどんどん展開していますね」夜になってメールを見たWは、驚いた様子である。そりゃそうだ。昼間にずっとこんなやりとりをしていたんだもの。
「行けるかどうかは、家族との調整があって、今週末にならないとわかりません」そりゃそうだ。逆に、家庭を持っているSがなぜそんなに身軽なのかの方が不思議である。
Wのメールは、次のように締めくくられていた。
「震災の影響のあった方、子供が生まれる方、定期演奏会に出られる方、みんながんばってください。私のほうはあまり大きな変化はありませんが、最近の環境の変化を思うと、自分のできることはやっぱりがんばんなきゃね、と思う今日この頃です」
まじめなWらしさがあふれた言葉だった。これを読んで、ちょっと涙が出た。
やはり人間は、いくつになっても変わらないなあ。こいつらを見てると、つくづくそう思う。
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コメント
3月26日の同期会、中止になってしまったんですね。でも、声をかける人がいて、これだけ反応が返ってくるというところが、高校時代のつながりって、やっぱり強固なものなんだなあと感じました。
5月3日のOB楽団の定期演奏会で司会をされるんですね。休憩時間に漫才をする先輩の姿を見られたらと思っています(^^)
投稿: ゴン | 2011年5月 1日 (日) 00時14分
ミヤモトさんサミットを主催したつもりはありませんが、行きがかり上、主催したSです。電話番号はもちろん覚えていますが、電話ボックスにすし詰めになった記憶はございません。今後はSは辞めて、カタカナで書くように!可愛い後輩の為にも、よろしく!!
投稿: S | 2011年5月 3日 (火) 21時56分
ゴンちゃんへ。コバヤシとは漫才ができませんでしたが、フクザワとは、演奏会の舞台の上で漫才をすることができました。
シュウシへ。読まれないことをいいことに、好き勝手に書いていたのだが…。誰かがここの存在を教えてしまったんだな。おゆるしが出たので、これからは、イニシャルをカタカナ表記にします。なお、すべて事実を書くことにしていますが、登場人物には多少のキャラ付けはしていますのでご容赦ください。
投稿: onigawaragonzou | 2011年5月 4日 (水) 11時11分
議長に昇格したSです。
5/3はミカ○、フクザ○、ジ○ンジ○ン、
Wと昔話で盛り上がりつつ、オ○キ夫妻を
コネクリ回すつもりでしたが、
残念ながら1時間程度しか時間もなく、
打ち上げに参加したメンバーが去った後は
25年ぶり再会のエ○シマに仕切られる始末。
次回はもっとパワーアップしてリベンジ
したいと思います。
オ○キの策略と酒の勢いにより意図しない
実名公表に踏み切ってしまい、今更ながら
若干後悔しています・・・。(なんてね)
まだこの「おっさんたちの~」の全貌は
調査中ですが、自らの半生を振り返りつつ、
読み解いていこうと思います。
投稿: S | 2011年5月 5日 (木) 22時23分
そうでしたか。「名前をカタカナ表記にしろ」というのは、酒の勢いだったんですね。とりあえず、名前はいったんイニシャルにもどしました。
投稿: onigawaragonzou | 2011年5月 5日 (木) 23時12分