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ふたたびの蝶ネクタイ 自画自賛編

5月3日(火)

もう少し、演奏会のことについて書く。

後半のポップスステージは、前半のカタい感じの演奏とは違うので、少し自由にやってもよい、と言われていた。

そもそも私に司会をやれ、ということは、「型どおりの司会はするな」ということを意味しているんだろうな、と解釈し、ひとつ、企画を考えることにした。

それは、第3部の中間あたりに、「舞台の上にいる団員にインタビューする」という企画である。演奏会も20回という節目を迎えるので、団員の心境を聞く、ということも、悪くはないだろう、と思ったのである。

おそるおそる提案すると、「やってもいいですよ」ということになった。

2曲目の「美女と野獣」が終わったあと、舞台上の団員2人に前に出てきてもらい、私がいくつかの質問をする、という流れである。

リハーサルの段階で、インタビューする2人のうちひとりを、今年高校を卒業したばかりのクラリネットのヤマダさん、もうひとりを、楽団最年長の団員(つまり私と同期)の、フルートのフクザワにお願いした。

つまり、最年少と最年長の2人にインタビューしながら、楽団の特徴である、世代の幅広さを知ってもらいたい、というねらいである。

(これ、ウケるかなあ…)内心、すごく心配だった。私がもっとも懸念していたのは、演奏の流れをいったん中断してこんな企画をすることにより、演奏会の雰囲気をぶち壊しにするのではないか、ということであった。せっかく練習を積み上げてきた音楽を、ド素人の司会者が分不相応の司会をして、演奏会をぶち壊しにしたら、それこそ練習してきた団員たちに申し訳ない。

頼みの綱は、フクザワであった。私はフクザワに全幅の信頼を置いているので、フクザワであれば、機転を利かせた受け答えをしてくれるだろう、と思ったのである。なにより私が昔からやりたかったのは、フクザワとの「掛け合い」で、人を笑わせることであった。それをこの機会に、実現したい、と思ったのである。

本番当日の午前中のリハーサルでやってみると、ヤマダさんもフクザワも、即興の質問にもかかわらず受け答えが素晴らしく、まずまずの手応えである。

さて、本番。3部の2曲目が終わり、ヤマダさんとフクザワが舞台の前に立つ。そして私のインタビューがはじまった。

ここで私は、リハーサルの時とはわざと違う質問をした。

「高校の時に好きだったアイドルは誰ですか?」

「アイドル、というわけではありませんが、宇多田ヒカルとかポルノグラフィティなんかをよく聞いていました」とヤマダさん。

「じゃあ、フクザワさんは?」

「…キャンディーズとピンクレディーです」

期待通りの、世代差がわかりやすい答えをしてくれ、会場もウケていたようだった。

「じゃあ最後に聞きます。将来の夢は何ですか?ヤマダさん」

ヤマダさんは、「将来は研究職について、新薬の開発をしたい」と答えた。

まったく偶然のことに、フクザワは、大学院を出たあと、新薬の開発をする会社につとめていた。

「フクザワさん、そういえば、製薬会社につとめてらっしゃいますよね」と私。

「ええ。私に人事権はありませんが、今日は会場に同僚も聞きに来ておりますので、その節はヤマダさんをどうぞよろしくお願いします」とフクザワ。

これにも会場はウケていた。

「じゃあフクザワさん、あなたの老後の夢は?」「将来の夢」と言わず、「老後の夢」と言うことで笑いをとろうとしたが、会場のウケはいまひとつだった。

「老後ですか…。老後、というわけではありませんが、将来は、この楽団の演奏を客として聴いてみたいですね。でも、演奏も続けたいし…、叶わぬ夢かも知れません」フクザワは答えた。

「舞台にも上がることができて、演奏も聴くことができる方法が、ひとつだけあるんですが、何だかわかりますか?」私は即興の質問をした。

「さて、何でしょう…」私の顔を見たあと、フクザワが言った。「まさか、司会者、ですか?」

ここで会場がまたウケた。

「その通り!いずれ、司会をお願いしたいと思います。…どうもありがとうございました。お二人にもういちど大きな拍手をお願いします!」

会場から拍手をいただき、無事、インタビュー企画は終了した。

さて、演奏会が終わり、打ち上げの席で、何人かの団員が、気を遣ってくれたのか「インタビュー企画は面白かったです」と言ってくれた。

打ち上げが終わってから、居酒屋の外に出ると、打ち上げの時に話す機会がなかったクラリネットのヒグチ君が近づいてきた。

「お疲れさまでした」

「どうも、お疲れさま」

「あれ、よかったです。インタビュー」

「あ、そう。それはどうも」

「あれ、…打ち合わせとかしたんですか?」

「いや、まったくしなかったよ」

「ええ、そうだったんですか!すごいですねえ。フクザワさん」

「え?」

「即興であんな受け答えができるなんて、…フクザワさん、さすがです」

「そ、…そうだね」

なあんだ、オレのことじゃねえのか。フクザワをホメているのか。その受け答えを引き出したのはこのオレだったんだがな。

またちょっと落ち込んだ。

…と、ここまで書いて、前回の記事のコメント欄を見たら、演奏会を聞きに来てくれたゴンちゃんが、「フクザワさんが司会、というのもアリですね」と書いていた。やはり、フクザワの当意即妙の受け答えが、会場ではウケていたようだ。

あのインタビュー企画でカブが上がったのは、フクザワだったんだな。

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