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自意識過剰のなせる災い

5月10日(火)

いまさら書くまでもないことだが、この日記はもっぱら、私がいかにダメな人間であるかを記すことに主眼をおいている。

夕方、学生たち数人と、市内某所に、ある仕事のお手伝いに行く。

「服が汚れるので、白衣かエプロンを持ってきてください。ゴム手袋とマスクも持参してください」

いったいどんな作業が待ち受けているのかはわからないが、服がそうとう汚れることは確実のようだ。だがあいにく、白衣もエプロンも持っていない。

いっそのこと、作業服を買おう。作業服なら汚れてもかまわないし、これから着る機会も増えるだろう。そこで近くのホームセンターで、安い作業服を買うことにした。

で、夕方、いったん職場から家に戻り、背広を脱いで作業服に着替えて、再び家を出ることにする。

家を出る前に、鏡の前に立って、考え込んでしまった。

似合わないというか、似合うというか…。

これまで、作業服など着たことのない私が作業服をいざ着てみると、なんかヘンな感じである。たとえて言うならば、ふだん背広を着ている大臣が、非常事態が起こったからといって、急に新調した作業服を着たようなものだ、といえばよいか。とにかく、鏡に映る自分の姿がじつに「わざとらしい」のである。

ただ、私の体型は、明らかに「現場監督」体型である。「どちらの現場監督さんですか?」と聞かれかねないくらい、作業着がフィットしていることもまた、事実である。

そもそも、勇んで作業服を着ていって、行ってみたら全然たいした仕事を任されなくって、「あいつ、なにふだん着たこともない作業服なんか着ているんだよ!バッカじゃねえの」などと思われたらどうしよう。

とか、

「作業服が似合いすぎるわりには、全然仕事ができないやつだな!」と、きっとみんなが思うにちがいない。

とか、そんな妄想が頭の中に広がり、作業服を着るのが急に恐くなってしまった。

(やっぱりやめよう)

いったん着た作業服を脱いで、汚れてもいいような私服に着替えた。

おかげで、学生との待ち合わせに5分遅れる始末。

そんな、私の心の葛藤など露も知らない学生たちが、私の車に乗り込み、市内某所の作業場へと向かう。

実際、作業をしてみると、たしかに服が汚れるのを覚悟しなければならない作業だった。

(こんなことなら、やっぱり作業服を着てくればよかった…)

と、いたく後悔した。

日々、こんな「些細な心の葛藤」のくり返しである。

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