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屋根の下の巴里

5月17日(火)

私はふだん、漫画をほとんど読まないが、浦沢直樹の『マスターキートン』は、以前、好きで読んでいた。

『マスターキートン』の主人公は、考古学者の平賀・キートン・太一で、考古学ではメシが食えないので、保険の調査員をして生計を立てている。英国特殊部隊にいた経験も持つ。その主人公の身のまわりに起こる、さまざまな事件や出来事を描いたヒューマンドラマである。

その中に、「屋根の下の巴里」というエピソードがある。私が一番好きなエピソードである。

キートンが考古学の研究を続けたい、と思う大きな理由の1つに、大学時代に人生を変えた師、ユーリー・スコット教授の存在があった。

第二次世界大戦中の1941年、ロンドンはドイツ軍の空襲にあい、壊滅的な被害を受ける。大学もまた、瓦礫と化してしまう。

大学の瓦礫を片づける1人の男性、その男性のもとに、自分の家の瓦礫の撤去に一区切りをつけた住人たちが集まってきた。

その男性こそが、若き日のユーリー・スコット先生である。

瓦礫の上に立つ先生は集まってきた人たちに言った。「さあそれでは諸君、授業をはじめよう。あと15分ある」

こんな時に授業を?と、いぶかしむ人々。

「敵のねらいは、われわれ英国民の向上心をくじくことだ。そこで私たちが学ぶことを放棄したら、それこそヒットラーの思うつぼだ。今こそ学び、この戦争のような、殺し合い憎しみ合う人間の愚かな性(さが)を乗越え、新たな文明を築くべきです」

先生の言葉は、瓦礫に覆われたロンドンの町にこだました。

ユーリー・スコット先生は、あるとき、当時学生だったキートンに言う。

「人はその意志さえあれば、いつでも学ぶことができる」と。

キートンは、ふと、この師の言葉を思い出し、落ち込んだ自分を奮い立たせるのである。

最近、なぜかこのエピソードが思い起こされてならない。

…なんてなことを、今日の「2年生歓迎会」のご挨拶でお話ししましたとさ。

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