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ふた組の結婚式

6月4日(土)

2005年に卒業したSさんの結婚式に出席するため、隣県に向かう。

Photo 私自身は結婚披露宴をしていないが、他人の披露宴に出席することは嫌いではない。人生のうちで、結婚披露宴ほど、多くの人に祝福され、かつ、多くの人に感謝できる機会はそうそうない。その場に立ち合える、というのは、何にしてもうれしいものである。

Sさんらしい披露宴だった。披露宴としての「お約束」や「段取り」をきちんと守りながら、その中に「笑い」や「遊び心」をふんだんに取り入れている。Sさんらしい、まじめさと明るさが同居した披露宴だった。

Photo_2 およそ9年ぶりに2人の卒業生に再会した。今日の主役であるSさんは、前の職場で教えていた学生で、私が今の職場に移ったあと、ほぼ同じ時期に編入してきた。つまり、前の職場と今の職場の両方で教えた、希有な学生である。9年ぶりに再会した2人の卒業生、というのは、私が前の職場の方で教えていた学生であり、Sさんの親友であった。

2次会の席で、その2人のうちのHさんが言った。

「先生、授業の中で『醍醐』のことをおっしゃったこと、覚えていますか?」

「覚えているよ」私は答えた。

醍醐とは、牛乳を濃縮して精製した、究極の乳製品のことである。美味とされるが、精製に手間がかかるため、幻の味ともいわれている。「深い味わい」という意味の「醍醐味」は、ここからきている。

…そんな説明を、授業中に余談として話したことがあったのである。

「あの話が今でもすごく印象的で、いつか、自分で醍醐を作ってみたいって思っているんです」

私にとっては、単なる雑談にすぎなかったんだがな。

だが授業とは、そういうものである。授業の本筋よりも、雑談として話したことの方が印象に残ることが多いのである。

Hさんの心の中には、私が言った「醍醐」の話が、間違いなく残っていたのだ。

些細なことであっても、卒業生たちに何かを残すことができたとすれば、それはとてもうれしい。

そしてこの10年の間で、そうした卒業生たちが東北地方一円に広がっていることは、私の財産である。

…なんてね。

ところで今日は、卒業生がもうひとり、結婚式をあげた。2007年卒業のIさんである。

1週間ほど前、卒業生のZ君から、「同期のIさんが、6月4日に結婚式をあげることになりました。ついては、ひと言メッセージをいただけないでしょうか。本人には内緒で、当日、サプライズで紹介したいと思います」というメールが来た。

さっそく、お祝いのメッセージを書いて、Z君に送った。Z君は、しっかりと代読してくれたことだろう。

「Iさん、本日は、ご結婚、まことにおめでとうございます。

Z君から、ぜひIさんにお祝いのメッセージを、とご連絡をいただきましたので、ひと言、ご挨拶申し上げます。

Iさんと同じ学年の学生は、いずれも個性的な人たちばかりで、とても結束が強く、例年になく、仲のよい学年でした。

しかし、実を申しますと、はじめから仲がよかったわけではありませんでした。コースに所属したばかりの2年生の頃は、お互いがあまり会話を交わすこともなく、じつに静かでした。「この学年、この先大丈夫だろうか?」と、本気で心配したりしました。

ところがその雰囲気を変えたのが、Iさんでした。Iさんは酒豪で、その外見的な印象からは考えられないくらい、日本酒が強かったのです。合宿やコンパでIさんが雰囲気を盛り上げてくれたおかげで、次第にみんなはうちとけていきました。Iさんがいなければ、この学年は、これほど仲のよい仲間にはならなかったでしょう。いまでもそう信じています。

Iさんの学年を遠くから見ていて、お互いが、精神的に支え合っているなあということが、よくわかりました。たぶん、卒業して何年も経った今でも、それぞれが大切な友人なのだと思います。これからも、きっとそうでしょう。

結婚も同じです。結婚とは、お互いが支え合うことだ、と思います。パートナーがいるだけで、ただそれだけで、心強いものなのです。結婚式が、共に支え合うパートナーとの新たな出発の日だからこそ、無条件に祝福されるべき日なのだと思います。

だから本日は、めいっぱい、みんなからの祝福を受けてください。

ひと言、といいながら、ずいぶん長くなってしまいました。最後に、新郎新婦の末永いお幸せと、みなさまのご健康を、心よりお祈り申し上げます。  2011年6月4日」

自分のことを棚に上げて、エラそうなことばかり書いてしまいましたが、おめでたいことが重なった、今日のよき日に免じて、どうかお許しください。

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コメント

記事中のZです。
ありがとうございました。

結局本番は『ニューシネマパラダイス』的な大学時代の写真のスライドショーを流したあと、先生のコメントを司会のプロの方に代読していただきました。

なんと、あのIさんが感動の涙を!。
大成功でした。本当にありがとうございました。

投稿: 江戸川 | 2011年6月 6日 (月) 09時47分

たぶん感動の涙を流したのは、「ニューシネマパラダイス」風の演出のおかげでしょう。司会のプロの方に読んでいただいたのなら、メッセージをもう少しちゃんと書けばよかったと反省しています。ともあれ、成功して何よりでした。

投稿: onigawaragonzou | 2011年6月 6日 (月) 23時58分

先日は遠いところ、そして暑い中、ご出席頂きまして、ありがとうございます。

感動より、笑顔を!いやっ笑いを・・・
をテーマの披露宴にしたかったのですが、
どうだっだでしょうか(笑)

二次会、そして三次会まで足を運んで頂き、
ありがとうございます。先生とお話出来て、嬉しかったです。

また顔を出しますので、宜しくお願い致します。

投稿: バナナガール茶話 | 2011年6月 7日 (火) 00時58分

「笑い」もありましたけど、「感動」もありましたよ。私の右隣に座っていた人は、茶話さんが読んだ「感謝の手紙」を聞いて泣いていました。もちろん、私も。

投稿: onigawaragonzou | 2011年6月 8日 (水) 00時32分

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