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深い闇のミステリー

6月17日(金)

「…で、それはどういう団体なんですか?」

「会員の経歴を調べてみると、どうも関連企業を定年退職したOBで構成されている団体のようです」

「ほう」

「その団体のホームページをみてみましたが、今の時点で彼らの主張をみれば、滑稽なかぎりで…」

「でしょうな。で、なんでまたそんな団体が?」

「このイベントは昨年からはじまっているらしいのですが、きっかけはその団体がこちらに話を持ちかけたようです」

「でもどうしてそんな話をすんなり受け入れてしまったんでしょう?」

「それは、受け入れた人の経歴を見ればわかるでしょう」

「…なるほど、経歴を見ると、たしかにすんなり受け入れた理由がわかりますね。これじゃあまるでズブズブの関係だ。つまり、その人の鶴の一声でこのイベントがはじまった、というわけですね」

「そうだと思います」

「お金はどこから出ているんでしょう?」

「さあそれがよくわからないのですが、どうもこちらからお金を出したような気配がないので、ひょっとして、団体側の手弁当の可能性があります」

「なるほど。関連企業からその団体に資金がまわっている可能性があるでしょうから、その団体の資金は案外潤沢なのかもしれない」

「そうですね。つまり丸抱え、ということです」

「こちら側、つまり、受け入れた人がお金を出した、ということは考えられませんか?」

「その可能性はたぶんないでしょう。もしそうだとしたら、その人がその団体の主張に与していることを意味しますからね。そんな危険はおかさないでしょう」

「なるほど、そうでしょうな。これまで言質を取られない答弁をすることで出世してきたような人でしょうからな。…それにしても、よりによってこの時期に、なんでまたこんなイベントをするんでしょう。普通の神経ではまず、考えられませんね。若者を食いものにしているとしか思えません」

「それだけ連中は追いつめられている、ということではないでしょうか。いま、猛烈な巻き返しをはかっているんだと思います」

「その最初の足がかりがここ、というわけか…。与しやすいと思ったんでしょうな。それにしても、恐ろしい話です」

「まったくです。でも、さらに恐ろしい話があります」

「何でしょう?」

「私たちがこの問題を嗅ぎつけて調査を始めたとたん、そのイベントの告知が、インターネット上から消えてしまったんです」

「なんと!ということは、そのイベントは中止になったということですか?」

「いえ違います。予定通り粛々と行われるようです。不穏な動きを警戒したからなのか、あるいは世論の風当たりをおそれたからなのか…」

「うーむ。姑息というほかないなあ。しかし、気をつけてくださいよ。この『深い闇』に首をつっこんだ人が、以前、謎の死をとげたことがあるそうですから」

「そうですね。おたがい夜道には気をつけましょう」

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