誰にも頼まれていない仕事
6月9日(木)
午後、3コマ連続の授業。
といっても、3コマ目は、90分を使って、映画を見せることになっていた。
(何を見せようかなあ)
この授業の担当が決まってから、もう半年くらい悩んでいた。黒澤明の映画は、90分ではとてもおさまらない長さだし、韓国映画は、好き嫌いが激しいだろうしなあ。
何より、授業の一環としてみせるのだから、授業科目の趣旨にあったものにしなければならない。単におもしろければいい、というものでもない。
悩んだ末、三谷幸喜作の「笑の大学」(映画版ではなく、演劇版のほう)のDVDを見せることにした。時間も100分ていどなので、授業時間としては許容範囲である。
少し話が脱線するが、スピルバーグ監督の映画「ジョーズJAWS」が日本で公開されたとき、映画監督の野村芳太郎は、脚本家の橋本忍にこう言ったという。
「私は今後、スピルバーグの作品を見ることはないでしょう。スピルバーグがこの作品以上の映画を作るとは思えない」
なるほど。私も、イタリア映画の「ニューシネマパラダイス」を見たときに、
「ああ、これを見ちゃったら、もうこの監督の今後の作品をを見ることはないだろうなあ」
と思ったものである。
三谷幸喜作品における「笑の大学」も、私にとってはそういう存在なのである。
わかりにくいか。
いまこの時期に、この芝居を学生たちに見てもらいたいと思ったのには、いくつかの正当な理由があった。
それがどのていど伝わったのか、興味があった。そこで、「見終わったあとにできれば感じたことや考えたことを書いてください」と、紙を配った。「ただし、『おもしろかった』『つまらなかった』『驚いた』」という語は使わないでください」とつけ加えた。
「おもしろかった」「つまらなかった」はともかく、授業の感想で一番多いフレーズは、「驚いた」である。「○○が××だったと知って驚いた」とか。
それくらいのことが驚くようなことか?何でもかんでも驚きすぎだぞ!と、いつも読みながら、つい笑ってしまうのである。まさに「驚きのインフレ状態」である。
だから、むやみやたらに「驚いた」というフレーズを使ってもらいたくないため、「驚いた」という語をNGワードにしたのである。
そのことを妻に言ったら、
「じゃあ、『仰天した』ならいいの?」と、相変わらずの屁理屈。
瞬時にそう言い換えることができるならば、それはそれで一つの才能ではある。
そんなことはともかく、時間を大幅に延長したにもかかわらず、受講した約50名のほとんどが、長い感想を書いてくれた。ふだんの授業とは比べものにならないくらいの、力作揃いである。
うーむ。私がふだんしゃべっていることなんぞ、一篇の良質な芝居の足下にも及ばないことが、これでよくわかる。商売あがったりだな。
どれも直截的な感想を書いてくれていて、微笑ましい。学生からこれだけの感想を引き出せる作品は、そうそうないのではあるまいか。
…ということに感動し、(そうだ、感想集を作ろう!)と思いたつ。みんなの書いてくれた感想をまとめて、冊子を作り、今度の授業の際に学生たちに配布することを考えたのである。
誰に頼まれたわけでもないのだが。
さっそく、書いてくれた感想をワープロソフトに打ち込みはじめるが、これがA4で6枚程度になってしまった。ほとんど半日仕事である。
(せっかくだから、表紙も作ろう)
ということで、表紙も作りはじめた。凝りだすと、もう止まらない。
(オレ、忙しいのに何をやっているんだろう?)
日の目を見ないのも悔しいから、ここに載せておくぞ。
こっちは表紙。
で、こっちは裏表紙。まだ修正の余地があるかもしれない。
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