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妄想健康診断

6月3日(金)

1年のうちでも、「憂鬱な日ベスト10」に入る日。

そう、それは、健・康・診・断!

憂鬱、などと言っては罰が当たる。「1年のうちで、健康であることを感謝する日」だ。

だが実際のところ、1週間くらい前から憂鬱である。

お酒を断つのはもちろんのこと、今週は、月、火、水と連続で、スポーツクラブに行ったもんね。「焼け石に水」とはまさにこのことである。食事も、こんにゃくとかところてんとかを食べたりして。

「女子高生じゃないんだから」と、妻にも揶揄されるが、背に腹は代えられない。

で、今日の午前中、実際に受けてみると、やっぱり「焼け石に水」である。日ごろの健康管理のずさんさには、ほとほと呆れてしまうような状況である。

しかも、いまだに咳がたまに出る。

問診で、「どこか体調の悪いところはありませんか?」と聞かれると、多少、体調が悪くても「ありません」と、つい、嘘をついてしまうが、あれって、「体調が悪いです」と答えたら、どうなるのだろうか。そもそも、具合が悪い人が、健康診断に来るのだろうか、などと、屁理屈が次々と頭に浮かぶ。

昨年の問診で、私の横にいた人は、「どこか体調の悪いところはありませんか?」と聞かれて、「歯が痛いです」と答えていた。(だったら歯医者に行けよ!)と、思わず心の中でツッコミを入れた。

最も憂鬱なのは、胃の検査でバリウムを飲むことである。

3年くらい前から、胃の検査受けなければならなくなり、仕方なく毎年バリウムを飲むことになった。私は幸い、バリウムを飲むのにあまり抵抗はないが、検査前に他の人がつらそうに飲んでいるのを見ていると、つい、不安になってしまう。

検査室の前に立っている係のおじさんが、胃の検査の前に言う。

「まず、胃を拡張するためにこの発泡剤を飲んでいただきます。この粉を全部口に入れていただき、その後、この白い液で一気に流し込んでください」

このくだりを聞くたびに、なぜかいつも「帝銀事件」を思い出してしまう。

「飲むと、ゲップをしたくなると思いますが、絶対にゲップをしてはいけません」

「絶対にゲップをするな」と言われてしまうと、本当にゲップを出さずにいられるか、たちまち不安になる。ゲップを出さないように意識すると、かえってゲップが出そうな気がして、どうしていいかわからなくなるのだ。さらには、ゲップをしてみたい誘惑にもかられる。

そしてバリウムの入った紙コップを左手に持たされて、検査室に入る。

検査台に立つと、ガラスの向こうにいる係の人が「その白い液を全部、一気に飲みほしてください!」と言う。

やはりここでも、なぜか「帝銀事件」を思い出してしまう。

それから、検査台の上でかなりアクロバティックな動きをして、胃のレントゲン撮影が終了。

いつも思うことだが、あんなものを飲まされて、検査台の上であんなアクロバティックな動きができるというのは、健康な証拠なのではないか?

心の中でそんな屁理屈を言いながら検査室を出ると、ふたたびさきほどの係のおじさん。例の不安を煽る人である。

「バリウムを排出するために、下剤を飲んでいただきます。バリウムが排出されないと、大変なことになりますからね。2錠で間に合いますか?大丈夫ですか?」

そう言われてしまうと、また不安である。私は体重もあるし、2錠では足りないのではないか?

だが、他の人とのやりとりを聞くとはなしに聞いていると、「2錠で大丈夫ですか?」と聞かれて、みんな「大丈夫です」と答えている。その自信は、どこからくるのだろう?

「あのう、…ちょっと不安です」

「そうですか。じゃあ、もう2錠、さし上げます。それと、水分をいつもより多めにとってください」

「はあ」

私はご存じのとおりの汗かきなので、ふだんから人より多めに水分をとっているつもりであるが、さらに多くとれ、ということらしい。ということは、ビックリするくらいの量の水を飲め、ということか。

「水分をとらないと、出が悪くなりますから」

と、最後に不安のダメ押しをする係のおじさん。

うーむ。これでバリウムが出なかったらどうしよう、とか、バリウムがどのくらい出たら「終了」なのかわからないなあとか、大いなる不安を抱えながら健康診断が終了。

結論。健康診断は、心の健康によくない!

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