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ツッパリが死語ではなかった時代

手塚治虫の短編漫画「ゴッドファーザーの息子」を読んでいたら、自分の中学時代のことを思い出した。

私の中学時代は、「校内暴力」などという言葉が流行っていた時代で、私の通っていた中学も、ご多聞にもれず、というより、市内で1,2を争う「荒れた中学校」だった。

各学年に不良グループがいて、「総番」とか「裏番」などというリーダー的存在もいた。

そんな中学で、私は1年生のときから、生徒会役員をつとめることになった。誰もなり手がいなかったためである。私以外の役員は、全員2年生である。

生徒会役員に選ばれてすぐ、生徒総会というものが開かれた。700人近い全校生徒を体育館に集めて、生徒会の1年間の活動成果や、今後の活動目標を表明する、というものである。生徒会役員6名は、体育館の舞台の上に着席する。これがじつに恥ずかしかった。

さてその時、事件は起こった。

2年生の不良グループが、突然、ボイコットを起こしたのである。「こんな総会なんてくだらねえ。先公(先生のこと)なんかクソ食らえ!大人なんてみんな信じられねえ!」みたいなことを言って、突然彼らは立ち上がり、自分たちの座っていたパイプ椅子をなぎ倒して、体育館の外に出て行ってしまった。

体育館は、騒然となった。

すると、正義感の強い生徒会長は、マイクを持って壇上で叫んだ。

「みなさん、静かにしてください!これから私たちは、この場に戻るように彼らを説得します。それまでどうか、待っていてください。みんなで生徒総会を成功させましょう!」

そう言うと、私以外の2年生の役員が、全員、舞台をかけ下りて、体育館の外に出た。不良グループの説得にあたりはじめたのである。

舞台の上でポツネンと残されたのは、1年生のこの私だけである。

(どうしよう…)

舞台の上でひとりだけ座っている恥ずかしさに耐えきれず、私もとりあえず舞台から下りた。

すると、1年生の友だちが笑いながら寄ってきた。

「お前も説得に行けよ。生徒会役員だろ」

「バカ!先輩を説得するなんてコワくてできるわけないだろ!」

「じゃあ、この場を何とかしろよ」お前がこの場をつなげ、という意味である。

「そんなことできるわけないだろ!」1年生の私にそんな機転が利くわけがない。

そして私を含めた全校生徒たちは手持ち無沙汰な時間を過ごしたのである。

1時間くらい経っただろうか?2年生の役員と不良グループたちが戻ってきた。

説得が功を奏したのだろう。不良学生たちは再び着席し、いよいよ総会が始まった。

これに感動したのが、先生たちである。とくに教頭先生は、生徒会役員たちが、不良グループたちの説得にあたり、みごと戻ってこさせた、つまり生徒たちだけでこの問題を解決したことに、最大限の賛辞を送ったのである。

しかし私は疑問だった。

不良グループたちが改心して、体育館に戻ってきたことを高く評価しているようだが、そのおかげで、ほとんどの生徒が1時間も待たされているのである。そのことに対しては、何とも思わないのだろうか?と。

不良生徒が立ち直ったことは美談になるが、ふつうに学校生活を送って、ふつうに頑張っている生徒は、ほめられることはない。

一見ふつうに見える生徒にも、鬱屈した思いはあるというのに。

正義感から、多くの生徒たちをほったらかしにして、舞台をかけ下り、不良グループの説得にあたったことは、生徒会役員として正しい行動だったのだろうか?

私には、正義感というものが、わからなくなってしまったのである。

さて1年後、2年生になって、私は生徒会長に選ばれてしまった。前年度の生徒会役員の中で、1年生が私だけだったこともあり、他になり手がいなかったのである。

(困ったなあ…)

前年度の生徒会長のような正義感がまるでない私に、はたしてこの荒れた中学で、生徒会長なんてつとまるのだろうか?ここから、私の苦悩の日々がはじまるのであるが、それはまた、別の話。

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