楽しいときは2次会に行く
6月24日(金)
職場の人たちとの飲み会で、決まって落ち込んで帰ることになるのは、「ああ、自分は職場であまり必要とされていないんだな…」ということを痛感するからなんだな。
ま、鈍感なふりをしてやり過ごしていくしかないのだが。
というわけで、1次会で失礼することにした。
6月25日(土)
先日、一緒に踏査に行った老先生のIさんから、「こんどの研究会で発表してくれませんか?」と、お誘いをいただいた。
その研究会は、今年でちょうど25年を迎える、地元の人たちによる研究会である。この日、25周年を記念した拡大研究会を行うという。
市井の研究会が25年も続くというのは、奇跡に近いことである。それもこれも、事務局をつとめているIさんが、毎月、ご自身でレイアウトした会報を出し、金融機関に勤めておられた経験を生かして、会計をしっかりとなさっているからである。その並々ならぬ努力は、100人近い会員の誰もが知っていることであった。
私は、自分が信頼している人に頼まれるとイヤとは言えない性格なので、ふたつ返事で研究発表を引き受けることにした。
午後1時から始まった研究会は5時半過ぎに終わり、6時からは場所を変えて懇親会である。20人近くが集まった。
会長先生が挨拶された。
「実は、事務局を長くつとめておられるIさんは、今年で喜寿を迎えられます。みなさんで、Iさんの喜寿をお祝いしましょう」
き、喜寿!?喜寿といえば、数え年で77歳ではないか!
とてもそうは見えない。だって先日の踏査では、山道をスタスタと歩いておられたぞ!
私だけではない。ほかの人たちも驚いていた。なぜなら、この研究会はIさんによる献身的な運営で成り立っていることを、誰もが知っていたからである。
大きな拍手が起き、Iさんは照れくさそうに頭をかいた。
宴会が始まった。
次から次へと、いろいろな人とお喋りをする。地元の老先生方や、遠くからいらした方など。どの方と話していても、楽しい。
あまりに楽しいので、2次会に行くことにした。私を含めて8人である。
老先生のIさんやKさんも、酔っぱらってすっかりいい気分である。
「先生、酒を飲んで話すってのは、いいもんですねえ」とIさん。私よりはるかに人生の先輩なのに、Iさんは私を立てて「先生」と呼んでくださる。
考えてみたら、Iさんと一緒にお酒を飲んでこんなにお話ししたのは、はじめてである。ほんのわずかであったが、Iさんがこれまで歩んでこられた人生の一端をお聞きしたりした。
「今日の研究会は、ほんとうによかった。なあKさん」
「ほんと、よかったよなあ」
長年、この研究会を引っぱってこられたIさんとKさん、ふたりの老先生が語り合っている。
IさんもKさんも、決して出しゃばらず、控えめでありながら、正しいことは正しい、間違いは間違いである、とはっきり言う。
私が知りたいことを尋ねると、ご自身が調べたことを惜しみなく教えてくれる。
決して自分の業績や手柄を誇らしげに語ることはしないが、でもまわりの誰もがその業績に敬意を表している。
自分もそんな喜寿になれるだろうか、と想像した。
「先生だって、あっという間に喜寿になりますよ」Iさんは私に言った。
2次会は夜11時に終わり、おふたりの老先生も、千鳥足で帰っていった。
帰り道、歩きながら思った。
「市井の人の中にこそ、ほんとうに尊敬すべき人がいる」と。
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