蚊帳の効果か
7月12日(火)
夕方、今年3月に卒業したA君(元局長)がたずねてきた。
見ると、腕のひじから下の部分が真っ赤である。あと顔も。
「どうしたの?」と聞くと、
「被災地支援のために派遣されて、側溝の泥をかいていたら、日に焼けました」という。
色白のA君は、日に焼けると肌が赤くなるらしい。今は遠くに住んでいるA君は、被災地での作業を終えて、大学に寄ってくれたとのことだった。
「ブログでクリーニング作業の話、読みました」
「今日もこれからあるよ。参加してみる?」
「ええ。実は期待してました」
ということで、夕方6時前、「丘の上の作業場」に向かう。
それと学生2人もはじめて参加する。4年生のTさんと、3年生のKKさんである。
KKさんは、「前から参加したかったんです~」という。
「ブログを読んで参加したいと思いました」
「読んでたの?」
「ええ、あれを読んだら、ぜったい参加したいって思いますよ」
「そうかねえ。自分ではわからないけど」
「私、いま友達に宣伝しまくっているんですよ」
「作業のことを?」
「いえ、ブログをです」
「ぜひ作業の方を宣伝してよ」
弱ったな。こっちはひっそりと書いているんだが。でもクリーニング作業に興味を持ってくれたのだから、この役立たずのブログも、少しは役に立ったということか。
「あのう、今日いらしているAさんって、あのラムネ事件の方ですよね」とKKさん。
「そうだよ。あの事件の犯人だよ」
どうやら毒ラムネ事件は有名らしかった。
「丘の上の作業場」に到着。やはり丘の上は涼しい。
次々と人があらわれた。今日は最多の人数かもしれない、と、代表のKさんはおっしゃった。
しばらくして、卒業生のT君が息を切らしてやって来た。
「蚊帳を持ってきました。蚊帳!」
昨日の居合いの胴着とはうって変わって、クールビズに革靴である。
昨日に引き続き、みんなの前で颯爽と蚊帳を広げるが、みんなの反応はいまひとつである。T君自ら、クールビズで革靴のまんまで蚊帳に入って作業をはじめるが、その姿はやはりシュールである。なにより、大勢の人が作業している中で、ひとりポツネンと蚊帳の中で作業をしている姿は、目立ってしょうがない。
作業をしていると、見慣れない女性が私たちのところにやってきた。
大勢の人間が刷毛で本をなぞっている姿は、たしかに不審である。挙動不審な団体と思われて調査されているのか?と、一瞬身がまえた。
代表のKさんが一通り説明すると、
「私、ここの職員なんですが、私も来週から参加してもよろしいでしょうか」という。
「もちろんですとも」
「何か特別な技術は必要でしょうか」
「いえ、何も必要ありません。はじめて来た人も、こうして作業してますし」と、Kさんは、A君やTさんを紹介しながら言った。
こうして、作業の仲間が増えていく。しかし、私たちの作業の様子を見て、興味を持って参加しようと思うとは、そうとうめずらしい。
ひょっとして蚊帳の効果かもしれないな、と私は思った。
「さあ、そろそろ片づけましょう」と代表のKさん。
T君がA君と二人がかりで蚊帳を、やはり悪戦苦闘しながらたたみはじめる。
「昨日よりずいぶん早くたためられたね」と私。
「ええ、たぶん1分は切ったと思います」
T君は誇らしげに答えた。
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