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録音ができるボールペン

7月26日(火)

仕事が進まないいちばんの原因は、この日記であることに気づいた。

ということで、これからあまり日記に力を注ぐことはやめることにした。

今日も、さして面白いことがあったわけではない。職場で仕事をこなし、夕方は「丘の上の作業場」で黙々と作業をする。そんな感じであっという間に1日が過ぎてしまうのである。

最近、出入りの業者が、やたらと海外直輸入の新製品を勧めてくる。kindleを買ったりしたせいかもしれない。

今日持ってきたのは、米国製の「録音ができるボールペン」である。

「以前、チラシをお持ちしましたけれど、今日は実物をお持ちしました」と、出入りの業者のTさん。

「これが、録音ができるボールペンです」

見ると、ずいぶん太くて不格好なボールペンである。ICレコーダーが内蔵されているから、仕方がないのかもしれない。

「ただ単に録音ができる、というだけではありません。あとでメモをしたところにペン先を当てると、そのメモを書いていたときに録音されていた内容を自動的に再生してくれるのです」

そういうと、Tさんは実演をしてみせた。

まず、喋りながらメモを書く。すると、喋っている内容が録音される。

メモ用紙はなんでもよいというわけではなく、特製のメモ用紙を使わなければならないようである。

いったん、録音機能を止める。

「では今度は、書いたメモに、ペンを当てていきます」

するとあら不思議、「メモ」「パソコン」「iPod」など、断片的に書いたメモにそれぞれペンを当てていくと、確かにそのメモを書いたときに喋った部分が、再生されるのである。

「どうですか。すごいでしょう」

うーん。どうもよくわからない。

「アメリカの大学生はみんな使ってますよ。大学の講義の録音をとりながら、メモをとって、あとで復習するのに便利なようです」

たしかにそれはそうかも知れないが、わざわざ録音してまで聴きなおす価値のある講義など、この職場に存在するとは思えない。

「あと、会議でも大活躍です」

これも説得力がない。録音する価値のある会議など、この職場には存在しないからである。

「記者の人なんかは、インタビューをするときに重宝しているそうです」

だが有能な記者なら、わざわざメモした部分にペン先をあてて該当部分を再生するなどといった、親切すぎる機能は必要ないだろう。こういう機械に頼るようでは、有能な記者といえないのではないか。

「…必要ないですね」と私。少なくとも私にとっては、ジョークグッズとしか思えなかった。

「あぁ、そうですか…。では、また面白い商品があったら紹介にまいります」

Tさんはうなだれて研究室を出ていった。

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