夜空会合
8月11日(木)
震災から5カ月が経った。
今日の夕方は、「丘の上の作業場」でいつも通りのクリーニング作業のあと、月に1度の「定期会合」を行うことになっていた。月に一度、自分たちの活動を報告しあい、これからの方針を立てていくことで、自分たちのいまの状況を確認する機会である。
元同僚のKさんも、この会合のために、職場から50㎞離れたこの「丘の上の作業場」にやってきた。
作業を早めにきりあげ、午後7時、屋外の作業場で、世話人代表のKさんが持ってきたノートパソコンとプロジェクタをセットしはじめた。
「どこに映すんですか?」
「この白い扉にです」
白くて大きな建物の扉は、パソコンの画像を映し出すのにおあつらえ向きの大きさである。
そのまわりにイスがならべられ、さながら野外で映画を観るような雰囲気である。
「これからホラー映画でもはじまりそうですね」と社会人のMさん。
現地に行って、被災した資料を救出した際の写真が、白くて大きな扉に映し出される。写真を見るかぎり、かなり命がけの作業のように見受けられた。
命がけ、という意味では、Uさんの車が、救済活動からの帰り、高速道路を走行中に突然煙をふいて止まってしまった体験談も語られた。
「高速を走っていたら、突然前の方から白い煙が出てきて、しばらくすると『ボン!』と大きな音がしたんです。それであわてて車を止めて、JAFを呼びました。
JAFが来るまで、なすすべもなく待っていたときに撮ったのがこの夕景です」同乗していたWさんが写真を映しだしながら説明した。
もともと年季の入った車だそうだから、故障も想定内のことだったのかも知れない。しかし今もUさんは、修理をしてその車に乗り続けているというから驚きである。
それにしても、Uさんをリーダーとする「中堅・若手社会人チーム」は、通常の仕事のかたわら、まるで使命感にかられたかのように、何度も現地へ足を運んで、過酷な資料救済活動を続けている。その行動力には、頭が下がるばかりである。
会合の最後に、白い扉に次のようなメッセージが映し出された。
「皆勤賞のMさん。エジプトに気をつけて行ってらっしゃい」
「中堅・若手社会人チーム」の中でも大車輪で活躍しているMさんは、明後日から2週間、エジプトに調査に出かけるという。世話人代表のKさんが、最後にサプライズメッセージを用意していたのである。
「これ、ささやかですが餞別です」世話人代表のKさんからMさんに餞別がわたされると、拍手が起こった。
「ありがとうございます。行ってきます」
「丘の上の作業場」は、これからしばし、お盆休みである。
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