吾輩は老猫である
8月11日(木)
猫を飼っている友人と話をすると、飼っている猫の写真をたくさん見せてくれる。
猫を飼っている人は、自然と猫を撮りたくなるものらしい。
で、見せてもらうと、「うちの猫の方がかわいい」と、誰しも思う。私もそう思う。
だが、妻の家で飼っている猫は、いまやすっかり老猫になってしまい、ややふてぶてしい感じになってしまった。だから最近は、他人様(ひとさま)の猫でも、飼いはじめたばかりの小さな猫の方がかわいく思えるときがある。
妻の家にいるオスの猫は、私が結婚する前からいるから、もう11年以上も生きている老猫である。つまり、家では私よりも先輩である。名前を「まあぶる」という。家族はみな「まあちゃん」と呼んでいるが、私はなんとなく「まあちゃん」とは呼ぶのが照れくさく、「まあぶる先生」と呼んだりしている。
だから、妻の家での序列は、父>母>妻>妻の妹>まあぶる先生>私>妻の妹の夫(あだ名は「課長」)となる。家では、私は完全に見下された存在なのである。
いちばん悲惨なのは、妻の妹の夫(「課長」)である。もともと猫嫌いの上に、家族の序列では一番下だから、猫との関係は最悪といってよい。
課長も課長である。「あの猫、お腹空いてるんじゃないですかねえ」とか、「さっきから猫がずっとボクのところに来るんですよ」と、やたら「猫」呼ばわりする。猫とはいえ家族の一員なのだし、名前もついているんだから、「まあちゃん」とか、「まあぶるさん」とか、名前で呼んでやれよ、と、さすがの私も思う。たぶんまあぶる先生も、「オレのこと猫っていうな!名前で呼べよ」と思っているに違いない。些細なことだが、そういうところに、課長がまあぶる先生に見下される原因があるのではないか、と思う。
さて最近、まあぶる先生について驚くべき話を聞いた。
妻の話によると、以前は、部屋の冷房をつけると、冷房を嫌って冷房のついてない部屋に逃げていったのだが、今年の夏あたりから、冷房のついている部屋の、いちばん風のあたるところにじっとするようになったという。
つまり、身体がすっかり、冷房に慣れてしまったというわけである。
そればかりではない。
扇風機を消して部屋を出たはずなのに、部屋に戻ると、なぜか扇風機がつけっぱなしになっている、という日が、ここ最近続いていた。
ある日妻が部屋に入ると、衝撃的な瞬間を目撃する。
まあぶる先生が、みずから扇風機をつけて、風のあたるいちばんいい場所を陣取って昼寝をはじめたのである!
なんという老獪な猫!猫も人間と同じように、年をとればどんどん老獪になってゆくのだ。
さて、こんな柄にもない「猫エッセイ」を書いたのは、昨晩、「まあぶる先生が飛び上がって私に抱きついてきた」という夢を見たからである。人間でも猫でも、夢の中に登場してくると、とたんに気になる存在になるものである。
次にまあぶる先生に会えるのは、いつだろう。
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