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心意気

9月7日(水)

夕方、携帯電話が鳴った。同い年のUさんからである。

Uさんから電話がかかってくることは稀だが、かかってくるときは、決まって何かの依頼である。

「一昨日はどうも」Uさんとは一昨日の作業で会ったばかりだった。

「頼みたいこと、あんスけど」

「何でしょう」

「例の作業、オレ、うちの職場とかまわりに一生懸命宣伝してるんスけど、お恥ずかしいことに、あんまり人が来てくんなくて…」

「そんなことありませんよ。いつもみんな来てくれてるじゃないですか」実際、Uさんの職場からは、毎回何人もの方が作業に来ていた。

「イヤ、まだまだ少ないっスよ。せっかくやってるんだから、もっとたくさんの人に来てもらいたい、て思ってるんです」

「はあ」

「幸いオレの家は、いま平穏に暮らしてますけど、やっぱり何かやらないとダメだと思うんです」

あの地震以来、Uさんはいてもたってもいられなくなり、被災地に何度も足を運び、体を張って救済活動を行っている。自分にもっと何かできないだろうか、という、真っ直ぐな性格のUさんらしい言葉である。

「そこでお願いなんスけど」

「ええ」

「オレが呼びかけてもダメなんで、Mさんが直接呼びかけてくれませんかね」

「私がですか?」

「オレが一斉メールで宣伝すると、『またアイツが何か書いてきてるよ』で終わってしまうと思うんです。でもMさんだったら、オレの職場やまわりの人たちがみんな知ってますし、『あのMさんがやってるんだったら…』っていって参加してくれるかも知れません」

「そんなことはありませんよ」

実際、そんな効果があるとはとても思えなかった。それに、私にそんな知名度があるとはとうてい思えない。

「でも、いまンとこ、それくらいしか思いつかないんスよ。Mさんが直接よびかけてくれれば、『じゃあ行ってみっか』って思ってくれる人もいると思うんです」

私はちょっと感動した。私を評価してくれたことに対してではない。この活動をどのように広めていくか、Uさんなりに真剣に考えていたことに対してである。あれこれと考えたあげく、私のところに電話をくれたのだろう。

つくづく、真っ直ぐな人だなあ、と思う。少々風変わりなところもあるが、多くの人が彼に信頼を寄せている理由がよくわかる気がした。

「いいですよ。じゃあメッセージを書きましょう。役に立つかわかりませんけど」

「そうですか!ありがとうございます。じゃあメールを送ってもらったらさっそく周りの人たちに転送します。ただしオレが依頼したってことではなく、あくまでMさんが自主的にメッセージを出したっていう体(てい)でお願いしますよ」

「心得てますよ」

…と言いつつ、ここにその顛末を書いてしまっては元も子もないのだが、私のすぐ近くに、こういう「心意気」の人がいることを、どうしても書き残しておきたかったのである。

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