テーマは再会
9月2日(金)
朝、釜山を出発して、大邱に到着した。
前回の日記で、「目的のない旅」と書いたが、実は今回の旅のテーマは「再会」である。
福岡でのコバヤシとの再会に始まり、ここ大邱では、留学時代の語学院の先生たちと再会することになっていた。
11時すぎ、東大邱(トンテグ)駅を降りると、構内では観光ボランティアの人たちが観光客に丁寧に応対していた。大邱は「世界陸上2011」一色、といった感じである。
(さて、昼ごはんはどこでたべようか…)
留学中によく通った店を思い出しながら、絞りに絞った結果、大学の北門前にあった中華料理屋さんで、ジャジャ麺を食べることにした。私たちによく話しかけてくれたアジュンマ(おかみさん)がいる店である。
ところが店に入ると、店の作りもメニューも同じなのだが、なんとなく雰囲気が違う。それに、よく話しかけてくれたアジュンマもおらず、全然見たことのないアジュンマが店を切り盛りしている。
「店の主人が変わったんですか?」と聞くと、「そうだ」という。
ということで、アジュンマとの再会は、かなわなかった。
続いて、やはりよく通った喫茶店「カフェC」に行くが、ここの店員さんも、みな知らない人ばかりである。ま、前回訪れてから1年たっているので、仕方のないことである。
午後2時過ぎ、大学の語学院に向かう。
語学の先生方に会うのは、とても緊張する。卒業生が教員に会いに行く気持ちは、たぶんこういう感じなのだろうな、と実感した。
意を決して5階の教員室に行くと、私が習った先生が何人もいらっしゃった。2級のときのカン先生(「粗忽者の先生」)とクォン先生(「大柄の先生」)、3級のときのナム先生、特講のときのアン先生である。
「よくいらっしゃったわね。いつ韓国に来たの?」
韓国語でいろいろ説明していると、
「こうやって話していると、まるで韓国人と普通に話しているみたいよ」
と、カン先生がお世辞をおっしゃった。もちろんそんなはずはないのだが、語学院で勉強していたころと比べると、物怖じせずにお話しすることができていることは、たしかである。
そのうちに、妻が語学の授業でお世話になったチェ先生もいらっしゃった。
「お久しぶりですねえ」しばらく話に花が咲く。
「そうそう、あれ、なんだかわかります?」チェ先生がご自身の机の後ろの壁を指差した。
「去年、○○さん(私の妻)が語学院に遊びにいらしたときに、私たちほとんど出はらっていていなかったんだけど、そのとき、ハングルでメッセージを書き残してくれたのよ。それがあまりにも完璧で、感動して、今でもこうして壁に貼っているんですよ」
私は、妻がそんなメッセージを書き残していたことも知らなかったが、1年以上も前に、かつての一学生の書き残したささやかなメッセージを、今でも大事にとっておいてくれたことに感動した。
「日本に来る機会があったら、必ず連絡ください。ご案内しますから」
先生方との再会を約束して、私は語学院を後にした。やはり来てよかった、と思った。
さて夕方5時。
今度は、4級のときのキム先生と夕食の約束をしていた。キム先生は、私たちが帰国後に語学院の先生をおやめになり、結婚された。今年の初めには男の子も生まれた。今は赤ちゃんを育てながら大学の非常勤講師をつとめている。
「キョスニム!一度ぜひ赤ちゃんを見に来てください!」と言われていたので、この機会にお会いすることにしたのである。
「ナンピョン(夫)もぜひキョスニムにお会いしたい、と言ってます!」ということで、赤ちゃんもまじえた4人で、大邱の近郊にある八公山(パルゴンサン)のふもとの食堂で食事をしながら、キム先生夫妻といろいろと話をした。
気がつくと夜9時近くになっていた。
「キョスニム、お時間大丈夫ですか」
「大丈夫ですよ」
「じゃあ大学に戻って、少し大学の中を歩きながらお話ししましょう」
私が韓国滞在中、毎日のように大学構内を散歩していたことを、キム先生は知っていた。
かつての散歩コースを20分ほど歩きながら話をする。
といっても、私は思うように韓国語が出てこない。こんな喋りの拙い人間と話をしていてもつまらないだけだろうに、と思った。
そしてお別れである。
「今日は楽しかったです」と私。
「今度は、ご夫婦でぜひうちに泊まりに来てください」とキム先生。「子どもの手がかからなくなったら、キョスニム夫妻と私たちとで、済州島(チェジュド)に行きましょう」
「わかりました」
「必ずですよ」
午後10時、再会を約束して、お別れした。
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