5箱のダンボール
11月1日(火)
今週はやたらと忙しいが、それでも夕方のいつものクリーニング作業には顔を出すことにしている。
今日は、「丘の上の作業場」での作業である。
仕事が長びき、作業の終了間際に到着すると、世話人代表のKさんが言う。
「そういえば、そちらで預かっていただいている資料のクリーニングがそろそろ終わりますね」
私の職場の作業場では、「丘の上の作業場」から被災資料を少しずつお預かりして、クリーニング作業を進めている。以前お預かりしたダンボール何箱分かの被災資料のクリーニング作業が、そろそろ終わりそうなのである。
そうなると、また新たに、「丘の上の作業場」から、被災資料の入ったダンボールをお預かりしなければならない。
「これから職場に戻られますか?」とKさん。
「ええ」と私。
「じゃあ、持っていってもらいましょう。ダンボール5箱分くらいですかね」
ダンボール5箱を、私の車に運んだ。いずれも、けっこう重い。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です」
職場に戻れば、誰か学生がいるだろうから、運ぶのを手伝ってもらえるだろう、と思ったのである。
夜8時前に作業が終わり、職場に戻った。
車からダンボールをひと箱取りだし、両手に抱えて建物の中に運ぶ。
だが、夜8時を過ぎると、職場の建物の玄関は閉まってしまう。カードキーを使って開けなければならない。
ダンボールを持ったまま、ポケットからカードキーを出して、玄関を開ける。
暗い、真っ直ぐの廊下を歩いて、ふだん学生がいるはずの部屋にダンボール箱を運ぶ。
だが、なぜか今日は学生が1人もいない。真っ暗である。
(なんだよ。こんな時にかぎって、学生が1人もいないのかよ)
仕方がないので、5箱すべてを1人で運ぶことにした。
再び車にもどり、ダンボールをひと箱取りだし、両手に抱え、玄関のところでカードキーを差し込んで玄関を開け、また、真っ暗で直線の廊下をトボトボと歩いて、部屋にダンボール箱を入れる。
これを2回、3回とくり返すうちに、
(俺、いま、1人でダンボールを抱えて、何やってんだろう?)
という気持ちになってきた。
真っ暗な廊下を、重いダンボール箱を両手に抱えながら、トボトボと歩く。
(これ、誰も見てないんだよなあ。誰も見ていないところで、俺、ひとりで何やってるんだろう)
だんだん切なくなってきた。
それでなくても、今日は朝から、ツイてないことばかりが起こっているのだ。
(いったい、俺の人生って、何なのだろう)
そして最後の5箱めのダンボール箱を抱えて、トボトボと歩きながら思った。
結局、私はずっと、こんな風に生きていくんだろうな、と。
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