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泣ける中華料理屋

11月23日(水)

朝、学会に参加するため、隣県に行く。現地で、ダブルKさん(ダブル浅野的な意味で)たちと合流した。

お昼、会場の近くの「サイカ」という名の中華料理屋に案内された。

「この中華料理屋は、泣ける中華料理屋なんですよ」世話人代表のKさんが私に言った。

「泣ける中華料理屋?」

「ええ。むかし、私がまだこの地で学生だった頃、よくこの店に食べに来たんですが…、ほら、僕らの学生のころって、土曜日が半ドンだったでしょう」

私たちが学生のころは、土曜日は午前中まで授業があって、午後からが休みだった。これを「半ドン」といった。いまから20年以上前の話である。

「土曜日のお昼にこの店に食べに来ると、この店の娘さんが当時高校生で、『ただいまー』って言って、お店の中に入ってくるんです」

「勝手口とかではなくて、お店の入口から入ってくるんですか?」

「ええ。で、高校の制服を着たその娘さんが、店の奥に入ったかと思うと、ものの1分もたたないうちにかっぽう着に着替えて店の奥から出てきて、『いらっしゃいませ~』と言って、お店の手伝いをはじめるんです。休む間もなく」

「ほう」

「それを見ていたら、なぜか涙がとまらなくなってしまって」

「なるほど、たしかに泣ける話ですね」

「僕はその泣ける光景を見るために、土曜日のお昼にここに通いつめたものです」

「ほう」

「いま、その娘さん、どうしているかなあ」

お店に入ると、実直そうな男性が「いらっしゃいませ」と言った。

「あの人は、たぶんこの店の主人の息子さんですね」

「どうしてわかるんです?」

「だって、『いらっしゃいませ~』の言い方が、店の主人にそっくりですもん」Kさんは、自分が通っていたころの店の主人の「いらっしゃいませ~」のモノマネをしてみせた。

その息子さんとおぼしき人が、注文を聞きに来た。

「このお店のおすすめは何です?」私はKさんに聞いた。

「やっぱり、サイカ定食でしょう。何たって、ボリュームがあります」

「じゃあそれにします」

「ご飯を大盛りにすることもできますよ。大盛りは、普通盛りと値段が一緒です」

「いや、普通盛りでいいです」

すると、その場にいた1人が、「じゃあ、俺、大盛りにします」と言った。

しばらくして、「息子さん」が、サイカ定食を運んできた。

「おまたせしました~。サイカ定食です。こちらが普通盛り、で、こちらが大盛りです」

「大盛り」を見て驚いた。

Photo本当に「大盛り」ではないか!「大盛り」というか、「山盛り」である。

大盛りにしなくてよかった、と心底思った。

食べ終わって店を出ようとすると、店の主人が私たちに近づいてきた。そして、さきほど大盛りを食べた人に、

「足りましたか?」

と聞いてきた。大盛りを食べた人は

「ええ、足りました」と答えた。

「そうですか。それはよかった」と言って、店の主人は厨房に戻った。

「一体どういうことです?」いまの会話の意味が全くわからない私は、Kさんに尋ねた。

「この店は、ご飯を大盛りにした人だけ、おかわりが自由なんです」

「普通盛りの人は、おかわりしちゃダメなんですか?」

「ええ、そういうことです」

「ええぇぇぇっ!!それ、おかしいでしょう。普通盛りの人に『足りましたか?』と聞くならまだわかるけど、何で大盛りを食べた人だけに『足りましたか?』って聞くんです?ふつうは逆でしょう」

どう考えても、あの大盛りを食べた人だけが「おかわり自由」である、というルールが解せない。この店の主人は、世の中の人間を「大食い」と「それ以外」に分類しているのだろうか。

謎を残したまま、店を出た。

「謎な店ですねえ」と私。

「謎でしょう。…あっ!いま、ブログのいいネタができた、て思ったでしょう」Kさんは勝ち誇ったように私に言った。

悔しいが、その通りである。

午後は満腹になったせいで…、Zzzzzzz

夕方、研究会が終わった。またしても世話人代表のKさん。

「さあ、夕食は餃子を食べに行きましょう。皿一杯に並べられた円盤餃子が、ボリュームがあっておいしくて、このあたりの名物なんです」

Photo_2 「まだ食べるんですかっ!?」

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コメント

 その店は御飯量の「原点」が他の店とずれているだけなのですよ。つまり、「普通盛り」と名付けている御飯の量が、お店の大将の頭の中では「小盛り」で、「大盛り」と名付けたものが「普通盛り」なのですよ。わざわざ小盛りを注文した人がお代わりを頼むのは、おかしいでしょう。かといって、普通盛りの量を「小盛り」と書いておくと、今度は本当に少食な客が注文して面食らうことになる。その斟酌の結果が、上のような飯盛りシステムになっている訳です。

 しかしネットを調べると、世の中には「デカ盛り」やら「テラ盛り」の店を紹介するブログがたくさんあって、だいたいそういう人はいろんな店で挑戦しているので、都道府県ごとにデカ盛りの店を一覧表にまとめている場合が多いです。それによると、その「餃子の○井」がある県は、隣県に比べて、そもそものメガ盛りの店が多い「大盛り文化圏」に属する地域のようです。

 最近、こちらの居住地でも「カレー食べ放題」をうたう店が複数できましたが、そのうちの一軒は、客を送り出す時の決め台詞が上のお店と同様に「満腹になりましたか(にっこり)」というもので、「あんた、休日メニューでは御飯とスープしかお代わり自由ではないじゃないか、このルウの量では、どうがんばってもスープ3杯、バターライス2皿までしか食えんだろう」という言葉を飲み込んで腹の足しにし、店を出るわたくしでありました。

投稿: こぶぎ | 2011年11月24日 (木) 02時38分

なるほど、「大盛り文化圏」ですか。そういえば、そちらの学生さんたちと一緒に餃子を食べに行ったのですが、「エンドウ下宿」に住んでいる1年生の3人は、ふだん餃子にありつける機会がないせいか、久しぶりの餃子をモリモリと食べ、おかわりまでしていました。ちなみに行ったお店は、「○井」ではなく「○鳥」でした。

投稿: onigawaragonzou | 2011年11月25日 (金) 00時55分

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