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いまさらキム・グァンソク

昨年夏、遅ればせながら韓国映画「JSA」をはじめて見た。

2000年に韓国で公開されたこの映画は、翌2001年に日本でも公開され、映画「シュリ」に続き、韓国映画の底力を認識させる映画として、好評を博した。監督は、「オールドボーイ」などの「復讐三部作」の作品で知られる、パク・チャヌクである。

ソン・ガンホのファンである私が、いままでどうしてこの有名な映画を見ていなかったのか、不思議というほかないが、まあそれはよい。

映画もよかったが、エンディングで流れる歌も、とてもよかった。そこでOST(サントラ)を買って、iPodに入れた。

OSTには、「二等兵の手紙」というタイトルの歌と、「宛てのない手紙」というタイトルの歌が入っていて、この2曲がとても好きだったので、くり返しくり返し、聞いていた。日本でいう「フォークソング」で、郷愁をさそう、名曲である。

ところがこれまで、この2曲が、誰が歌った歌なのか、さして気にもとめずに聞いていた。iPodにも、映画音楽の担当者の名前は出てくるが、歌手の名前が出てこない。CDの解説を見ればすぐにわかるのだろうが、その努力も、怠っていた。

で、今日(正月2日)、録りだめしていた韓国KBS放送の人気番組「不朽の名曲2」を見ていて、その歌手の名前がわかった。

「不朽の名曲2」とは、韓国で一世を風靡した「伝説の歌手」を毎回1人取りあげて、その人の歌を若いアイドルが歌って優劣を競うという番組である。韓国の80年代や90年代に一世を風靡した歌手の歌と、いまのアイドル歌手の名前をまとめて知ることのできる、一挙両得の番組なのである。

そのなかで、「キム・グァンソク特集」という回があったのだが、キム・グァンソクこそが、「二等兵の手紙」「宛てのない手紙」を歌った歌手である、ということが、ようやくわかったのである。

なんという遠回り!

1964年生まれのキム・グァンソクは、フォークソング歌手として同世代の若者のカリスマ的存在だったが、1996年、31歳の若さで、自ら命を絶って、この世を去る。

私とほとんど同世代の人だったんだな。

これで、いくつか思い出したことが。

韓国留学中、語学学校の4級の文法のチェ先生が、授業中にある歌手の話をされた。その歌手は、チェ先生が学生だったころのカリスマ的存在で、あるとき、突然この世を去ってしまったのだという。

「とてもいい歌を歌っている歌手だから、みなさんも機会があったらぜひ聞いてみてください」とチェ先生。

「その歌手の名前はなんですか?」私は質問した。

「○○○です」と、先生は答え、私はその名前をどこかにメモしたはずなのだが、そのメモもどこかに行ってしまい、聞いた名前もすっかり忘れてしまった。

いま思えば、チェ先生が言っていた歌手とは、キム・グァンソクのことだったんだな。

もうひとつ。

昨年9月はじめ、韓国の大邱に行ったときのことである。韓国語3級の授業でお世話になったナム先生とその姉夫婦とで、密陽(ミリャン)にドライブに行った際、ナム先生のヒョンブ(姉の夫)と、映画の話になった。

「『JSA』は見ましたか?」とヒョンブ。

「ええ、見ました」と私。

「あれは私の好きな映画です。とくにあの映画の中に出てくる歌がすばらしい」

「私もそう思いました」

「なにしろ、○○○の歌は、僕らの世代にとっては忘れられない歌ですから」

と、そのとき、ヒョンブが歌手の名前を言っていたのだが、聞き流してしまった。

いま思えば、これもまたキム・グァンソクだったんだな。

そして「JSA」は、韓国のある世代の人たちに、郷愁を呼び起こす映画だったのだ。

今さらながらこんなことに気づくとは遅すぎる。私はいままであまりに無頓着であったことを恥じた。

こんど韓国に行ったら、忘れずにキム・グァンソクのCDを手に入れよう。

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コメント

김광석 이등병의 편지(1994)
http://www.youtube.com/watch?v=Km-SZ2AfgAs

曲調は違いますが、よく日本では「尾崎豊」にたとえられます。

投稿: こぶぎ | 2012年1月 3日 (火) 09時40分

ありがとうございます。たしかに、カリスマ性といい、その最期といい、尾崎豊とダブりますね。「二等兵の手紙」は、軍隊経験のある韓国の若者たちすべての郷愁をさそう歌なのではないでしょうか。映画「JSA」の中にも、ソン・ガンホ演じる人民軍中士が「なぜグァンソクは死んだんだろう?」というセリフがありますね。ソン・ガンホも彼と同世代なのです。

投稿: onigawaragonzou | 2012年1月 3日 (火) 23時56分

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