2万字の死亡フラグ
2月7日(火)
夕方、「3年生のための卒論ガイダンス」を行った。
といっても、これは職場の公式行事でもなんでもなく、私が勝手に(よかれと思って)行っているものである。3年生に、いよいよ卒論を書くんだという自覚を持ってもらおうと、毎年この時期に開催している。
時間の空いている4年生にも出てもらい、3年生に向けて自分の体験を語ってもらうこともしている。
3年生5人、4年生4人が集まってくれた。
4年生の体験がなかなか面白い。卒論提出直前は、精神的にかなりの極限状態にあったことがわかる。あまりの壮絶さに、私も少し引いてしまった。
「あのう、私たちなりの『卒論の心得』というのを考えてきたんですけど、読み上げていいでしょうか」と4年生のSさん。見ると、ノートに箇条書きで、「心得」を書いてきたようだった。
「どうぞ、読んでみてください」
Sさんが「心得」を読みはじめた。いくつか読み進める中で、こんな「心得」があった。
「『2万字に届けばいいんだろ』は死亡フラグ!」
ん?意味がわからない。
「死亡フラグ…。死亡フラグってなに?」
Sさんが説明をはじめる。
「よく映画とかで、『この戦争が終わったら、オレ、彼女と結婚するんだ』というセリフが出てきたりするでしょう」
「ああ、よく兵士が戦場で、ペンダントの中の恋人の写真を見せたりしながら言うセリフね」
「ええ。で、そのあと、その兵士は必ず戦場で死ぬじゃないですか」
「そうだね」
「つまり、そのセリフが出てきた時点で、『死亡フラグが立った』というわけです」
なんとなくわかってきた。そのセリフが出てきたというのは、「こいつ後で死ぬな」の合図、ということである。
「じゃあ、『2万字に届けばいいんだろ』が死亡フラグっていうのは?」
「卒論の本文の指定字数は2万字以上ですよね」
「うん」
「その指定字数ギリギリの2万字に届けばいいや、という気持ちで卒論を書いていると、決して2万字には届かない。つまり卒論が完成しない、ということです」
なるほど。わかったような、わかんないような…。
つまりこういうことか?字数のことばかり気にして、最低限の2万字をクリアさえすればよい、なんて考えていると、痛い目にあう、ということだな。
たしかにそのとおりだ。字数を気にしているようでは、いい論文など書けないのである。
だが、それが言葉で表現されるときに、
「『2万字に届けばいいんだろ』は死亡フラグ!」
となるのが、よくわからない。
だが3年生は、この言葉を聞いて、実にしっくりいったような顔をしている。
つまり、4年生と3年生の間では、この言葉のニュアンスが正確に伝わっているのだ。
あいだにいる私だけが、ポッカーンとしている。
つづけてSさんが「心得」を読み上げた。
「卒論提出直前の、M先生の『無茶ぶり』には気をつけろ!」
「なんだいそれは?」
「提出の直前に先生からメールで、『この部分をもっと(内容を)ふくらませるように』と指導されたじゃないですか。でも、提出日の直前は3連休で、図書館も閉まっていたんです。そこで、提出日の朝に図書館に駆け込んで、大急ぎで先生の言われたところを書き足して、提出したんです」
なるほど、そういうことがあったのか。当の本人である私は、全然そんなこと考えていなかった。
「提出直前に、M先生が『無茶ぶり』をしてきますから、気をつけてください」
そう言われると、今後はわざと「無茶ぶり」をしてみたくなるなあ。
あ、これが、「フラグが立った」ということか?
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