試練のような悪路
疲労困憊と憂鬱の毎日である。
その原因の大半を占めているのが、大雪によって、通勤路が「悪路」と化していることである。
2月4日(土)に大雪が降り、翌5日(日)は、一転してよい天気に恵まれた。6日の夜には、少し雨が降り出した。雨が降るということは、気温が高いということである。
7日(火)の朝、久しぶりに車で通勤しようと思い、家の前の駐車スペースから、道路に車を出してみて驚いた。
とんでもない「悪路」である。道路が、積もった雪と車の深い轍でガタガタなのである。
大雪で道路に雪が降り積もった後、今度は雨が降り、中途半端に雪がとけ始めたところに車の深い轍が残り、さらに早朝の放射冷却現象によってそれが凍るという、最もタチの悪い道路状況なのである。
もし、この世に天候をつかさどる神様がいるのだとしたら、実に地味な、それでいて最もいやらしい嫌がらせをしたものである。
家の前の道路をガタガタと走り始める。頭が天井に付くんじゃないか、というくらいに、車が大きく縦揺れする。
むかし、テレビのバラエティ番組の企画で、「アンコールワットに続く道路が未舗装で悪路だから、その道を舗装しよう!」というのがあって、明日をも見えぬ若者たちが、力を合わせてボコボコでグチャグチャの道を走りやすい道に変えていったが、まさにあんな感じのボコボコ加減である(わかりにくいか)。
やっとのことで、市街地の主要道路に出た。すると、職場に向かう道路が大渋滞である!というか、まったく動く気配がない。
(あきらめよう)
車で職場に行くのをあきらめ、いったん自宅に戻り、自宅から歩いて職場に行くことにした。
(最初からそうしておけばよかったんだ)
後悔しながら、ハンドルを逆に切って、自宅にとって返すことにする。何度もスタックしながら、やっとの思いで自宅に戻り、歩いて職場に向かった。
歩いたら歩いたでまた、これがしんどい。
「アンコールワットへ続く未舗装の道」だって、こんなに歩きにくいことはないんじゃないか、というくらいの、歩きにくさである。ボコボコでツルツルの道である。
ほうほうのていで、職場に到着した。
さて仕事が終わって、夜。
この日(7日)は、DVDマガジン「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」の発売日である。本屋さんに寄ってから自宅に戻ろうと思い、職場を出る。
だが、本屋さんは職場と自宅のあいだにあるのではなく、かなり遠回りしなければ、本屋さんに寄ることはできないのだ。
なにもこんな日に買いに行くこともなかろう、と言われればそれまでだが、発売日に買いに行きたいというのが、人情というものである。むかしそうやって、少年漫画雑誌をよく買いに行ったものだ。
例によって、ボコボコでツルツルの道をそろーりそろーりと歩く。1時間以上かけて、ようやく本屋さんに到着した。そして本屋さんから、また30分くらいそろーりそろーりと歩いて自宅に到着。
自宅の前の道路は、「やる気のない除雪車」によって中途半端に除雪されていて、相変わらず歩きにくい。
自宅前の、自分の車が止めてある駐車スペースを見て驚いた。
車の前に、巨大隕石か!と思われるくらいの、大きな雪の塊が転がっているではないか!しかも、カッチカチのやつである。
どういうことだ??これは誰かの嫌がらせなのか?
私が車をとめている駐車スペースのすぐ前は、道路になっている。おそらく昼間、この道路を「やるきのない除雪車」が中途半端な除雪作業をしていたときに、道路の雪を道の両側によけていく過程で、この巨大隕石のような雪塊が、私の車の前に転がってきたのだろう。
まあ、そんな推測などどうでもよい。とにかく、こんな巨大隕石のような雪塊が車の前にどーんと置かれていては、車が出られなくなってしまう。
スコップを持って、雪塊をどかそうとするが、ビックリするくらい重いのと、ビックリするくらいカッチカチなために、雪塊はなかなか動かない。
スコップを何度も振り下ろしながら、まるで撲殺するかのように雪塊を粉砕していく。
(人を撲殺するって、こんな感じなのかなあ…)
と、不謹慎なことを考える。
かくして、雪との戦いはまだまだ続く。
神が与えたもうた試練にしては、地味に嫌がらせが入っているよなあ。
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