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追いコンの憂鬱

2月21日(火)

毎年恒例の、卒論発表会と「追いコン」である。

朝9時から始まった卒論発表会は夕方6時前に終わり、そのあと、「追いコン」へとなだれこむ。

毎年のことだが、この日になると、ひどく憂鬱になる。

理由はよくわからないが、たぶん、この1年間をふりかえって、自分の力不足だとか、至らなさを痛感するからだろう。

他の同僚の指導力にくらべ、俺ときたら…と、いつも軽く死にたくなるのである。

(あーあ、この仕事、やめちゃおっかなあ)といつも思う。

卒論発表会が終わり、「追いコン」へ向かう道すがらも、

(追いコン、サボっちゃおうかなあ)

と、思い、つい足どりも重くなる。毎年そうである。

まあ、風物詩みたいなものだと思えばよい。

「追いコン」では、4年生や、他の同僚たちは、解放感や安堵感、達成感といったものに浸っているのだが、自分はどうも、そういう気にはなれない。

「追いコン」の時に、教員全員がやらされる「4年生に贈る言葉」というのが何よりイヤで、今年もまた精彩を欠く話をしてしまい、やはりここでも軽く死にたくなる。ほかの同僚たちが実のある挨拶をしているだけに、なおさら憂鬱である。

だが、そんな中でも、嬉しいことがいくつかあった。

ひととおり挨拶が終わり、例によって心がどんよりしながら、端っこの方で1人でお酒を飲んでいると、今年卒論を指導した4年生の女子5人がやって来た。

卒論指導のお礼に、といって、チョコレートを作ってきたというのである。

箱を開けてビックリした。

M チョコレートには、私の顔のイラストが描いてあった。

「これ、さっき急いで描いたんです」とSさん。「チョコレートは、昨日の夕方作ったんですけど」

チョコレートも手作りらしい。

「これ、もったいなくて食べられないよ」と私。

「でも、傷んでしまうかも知れないんで、2,3日のうちに食べてください」

3月に卒業する4年生たちのうち、少なくとも5人の学生には支持されていたということか、と考え、この仕事を辞めるのはまだ早いかも、と思いとどまった。

次に3年生のOさんと話をする。

「韓国の留学が正式に決まりました!」とOさん。

「それはおめでとう」

「私が韓国に留学しようと思ったのは、先生のブログを読んだからです」

「え?」

「韓国留学中のことを書いた先生のブログを全部読んで、私も韓国に留学しようと決心したんです」

「……」

このくだらないブログが、人生を変えるきっかけになるなんて…。私はなんだか申し訳ない気持ちがした。

でも、私の留学が、1人の学生の留学を後押ししたのであれば、私の留学は決して無駄ではなかったのだ、と安堵した。

「先生、2次会どうしますか?」1次会のお開きが近づいたころ、幹事の学生が聞いてきた。

今日は憂鬱だったので1次会で帰るつもりだったが、

「せっかくだから、もう少しみんなと話してから帰ろうか」

と、2次会の会場に向かうことにした。

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