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やる気を出すための奇策

2月16日(木)

今日はもともと、学生たちと後期の授業の打ち上げをやる予定だった。

だが1週間ほど前、幹事の学生が言った。

「すいません。打ち上げ、学生の人数が集まらないので中止になりました」

うーむ。年々、人望がなくなっていく私。ま、それはそれで仕方がない。もうこの先、打ち上げをやることもないだろうな。

その代わりに、というのもヘンな話だが、今日中にどうしても終わらせなければならない仕事があった。かなり根気のいる仕事である。

だが相変わらず、やる気が出ない。

職場では集中できないし、家に帰っても、部屋が寒くって、仕事どころではない。なにより、家で仕事などできるタイプではないのだ。

どうしたものか…。

そこでハタと膝を打った。

「ホテルに缶詰」だ!

有名な作家さんは、締切が近づくと、出版社が用意したホテルに缶詰になって仕事をする、なんて聞いたことがあるぞ。私の場合、自腹だが、この際やむを得ない。

実はこの手の話、前にもこの日記で書いたことがある。私のダメ人間ぶりは、下の日記に書いているので、参照のこと。

神は降りるか

今回は、失敗しないよう、周到に場所を考えなければならない。

ではどんなところがいいか?

まず、ふつうのビジネスホテルはよくない。ビジネスホテルの部屋は、照明が暗いし、それに安いところだと、テーブルが異常に小さく、仕事をするのにかえってストレスがたまるからである。加えてビジネスホテルのお風呂は小さい。これでは疲れがとれない。

理想をいえば、温泉宿の和室がいい。和室だと、部屋の電気は明るいし、なにより温泉に入って、仕事の疲れを癒すことができる。いや、温泉でなくてもいいから、大浴場のある旅館なら、十分である。

だが、旅行サイトで探してみると、周辺の温泉宿はどこも1万円以上の値段の部屋ばかりで、仕事をするためだけに泊まるのには、ちょっともったいない気がする。

いろいろ探してみると、市内に1軒だけ、私の理想とする宿があった。

和室で、バス・トイレ共同だが、少し広めの浴場がある旅館である。しかも1泊2食付きで7000円ちょっとの値段である。インターネット上での評判も、悪くない。

そもそも今日は、学生と授業の打ち上げをするはずの日だったのだ。考えてもごらんなさい。学生と打ち上げをしたら、2次会まで含めて、1万円以上は軽くとんでしまうのだ。それを思えば、1泊2食付きで、しかも懸案の仕事が片づくのであれば、これほどリーズナブルなことはない。打ち上げをしたつもりで、自分に投資すればよいのだ。

…と、自分に言い聞かせて、さっそくここを予約し、今日の夕方、宿に向かった。

宿は、まちなかにある純和風の旅館で、そうねえ、たとえて言えば、映画「男はつらいよ」の中で、寅さんが泊まるような感じの宿、といったらよいか(また始まった)。

実直そうなご主人がいて、家族総出で旅館を切り盛りしている、という感じである。

建物は、かなりの年代物だが、中は掃除が行き届いており、とても清潔である。

夕食も、工夫が凝らされていて、実に美味しい。学生と行く揚げ物ばっかりの居酒屋にくらべたら、はるかに美味しいぞ。

いや、マジで寅さんがこの町に来たら、絶対にこの旅館に泊まるだろうな…、というくらい、風情のある旅館である。

おかげで、懸案の仕事が、予想以上にスムーズにはかどった。これは、本当である。

これからも仕事にいきづまったら、またこの宿に泊まろう。

学生たちよ、私を放っておいてくれてありがとう!

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