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「思想界の巨人」の言葉

3月19日(月)

先日この世を去った吉本隆明は、「思想界の巨人」といわれる。

学生時代、少し背伸びをして吉本隆明の文章を読んでみたが、どうにも難解で理解できなかった。

ところがここ数年、糸井重里さんが、吉本隆明の話を聞きに行ったり、その仕事をまとめる仕事をしているのを「ほぼ日」なんかでみていて、

そろそろ、吉本隆明かなあ。

Ph2 などと思っていた。 で、先日、古本屋で吉本隆明・糸井重里『悪人正機』(新潮文庫)を買って読んでみたら、これがもうじつに面白い。

面白い、というのは語弊があるか。語られている言葉が、胸にストンと落ちる、という感じなのである。

吉本隆明が糸井さんのインタビューに答える、という形式で作られた本だと思うが、本の中で糸井さんはインタビュアーとしては登場せず、吉本隆明による「語りおろし」という形がとられている。糸井さんは、各章の最初に「前口上」として、簡単な解説というか、絵解きをしている。

何気ない言葉がすごくよい。

「他人ってのは、自分が自分を考えているほど、君のことを考えているわけじゃないんだぜ」(「「生きる」ってなんだ?」)

これは正確には吉本隆明の言葉ではなく、彼が若い頃に言われた言葉だそうだが、自意識過剰の私には、はっと気づかされる言葉である。

「結局、そういう幼い時の、小学生くらいの友だちっていうのは、離ればなれに、もうどうしようもないくらいに別々になっちゃうんですね。その経験で僕が思ったのは「そいつがいい目にあってずっと生活できていればそれでいいや。以後、会うことはないかも知れないけどそれでいいんじゃないか」ってことなんですね」(「「友だち」ってなんだ?」)

小学生の時の友だちに限らず、離ればなれになっている友人のことは、この考え方をすればずいぶん気が楽になる。

「大学に行くってことは失恋を経験するみたいなもんで、がっかりすることが重要なんです。こんなもんかって見当がつくようになりますからね」(「「教育」ってなんだ?」)

そうそう。私も大学に入って、大学院に進んで、こんなもんかってがっかりしたもんなあ。その感覚は、間違っていなかったのだ。

「結局、靴屋さんでも作家でも同じで、10年やれば誰でも一丁前になるんです。だから、10年やればいいんですよ。それだけでいい」(「「素質」ってなんだ?」)

これは、糸井さんが最も気に入っている言葉のようである。素質を云々するよりも、一生懸命でなくてもいいから10年続けろ、というのは、学業、仕事、趣味、いずれにもあてはまる。私もこの稼業、もう10年も続けてるもんね。

「自分の、自己評価より上に見られるようなことをやっちゃいけないんですよ」(「「素質」ってなんだ?」)

これもわかるなあ。けっこう身のまわりにそういう人が多かったりするし、自分も、ともすればそうなりがちだからね。

文脈から切り離してしまうとなかなか伝わりにくいかも知れないが、言葉のひとつひとつがストンと胸に落ちる感じがするのだ。実際には、糸井さんがうまく話を引き出しているのだろう。

「思想界の巨人」の言葉が、中学生以上であれば、誰でも読める、というのは、ある意味すごいことである。これ、大学に入学したての1年生に読ませて、少人数の演習で討論させたら、面白いんじゃないだろうか、などと、また仕事に引きつけて考えてしまう。

それに、吉本隆明は、さかのぼればうちの職場の卒業生だぞ。もう少し、うちの職場でとりあげてもいいんじゃないの?ちょっと冷たすぎやしないか?

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